第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※
まだ治りきっていない体を必死に動かして川に向かって手を伸ばしているお母さんを見れば状況は一目瞭然。
私は全速力でそこまで行くとお母さんの肩を掴んだ。
「お母さん、大丈夫ですか?!」
「ほの花さん…、ほの花さん!!お願いします、琥太郎を助けてください!お願いします…!私はどうなっても良いので…!琥太郎を…!!」
半狂乱になりながら私に縋り付く彼女が指差した先には小さな岩に必死にしがみ付く琥太郎くんの姿。
しかし、私が来たことでホッとしたのかその場に崩れ落ちたお母さんを慌てて支えるが、熱が上がっているようでフラフラして危ない。
仕方なく安全なところまで運ぶと琥太郎くんに声をかける。
「琥太郎くん!!大丈夫?!」
「…ほの花っ、!だ、だいじょ、ぶ…」
「すぐ助けるから待ってて!!」
そう言うと川に足を入れるがあまりの濁流に流石に足を取られる。
しかし、あんな小さな岩の上に飛んで着地できるかどうか。下手したら琥太郎くん諸共一緒に流されてしまう。
何か投げるもの…。見渡してもこんな暴風雨で大体のものは飛ばされてしまっている。
せめて舞扇を持ってきていれば木を切って橋にしたりできたのに、慌て過ぎて着の身着のまま来てしまった。
何でこうも私は大馬鹿者なの。
もう考えてる暇はない。
彼の手が離れてしまう前にあの岩に飛び移って、抱き上げて此処に戻ってくる他に方法はない。
いつぞやの宇髄さんみたいに私は華麗に決められるだろうか。
状況は同じなのに足場も悪いし、雨で重くなった夜着が纏わりついて邪魔で仕方ない。
それでもやるしかない。
漸く決心をして琥太郎くんが掴まっている岩に向かって狙いを定めると地面を蹴った。
(…届け!)
トン──
小さな岩に何とか着地を成功させると琥太郎くんの体を引き上げた。
「琥太郎くん!!大丈夫?!」
「だ、大丈夫、ほの花、何で…?」
「話はあとで!!」
冷たくなってしまったその体を思いっきり抱きしめると早いところ戻るため、再び川縁に向き合った。
しかし、突然吹いた強風で完全に体勢を崩した私は最悪な事態を招いてしまう。