第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※
「わぁー。すごい風ですねぇー!!」
夜になると強い風が吹き出していて、宇髄さんの言う通り雨が降り出しそうな感じがした。風が思ってるより強いからひょっとしたら早まるかもしれないなぁ。宇髄さんは大丈夫かな…なんてぼんやりと考えていると須磨さんがこちらを見てにんまりと笑った。
「やだぁー!ほの花さんったら!天元様なら大丈夫ですよー!」
「え、…?あ、ああ!は、はい。そうですね…。」
顔に出ていたのだろうか。須磨さんがそう言って背中をバンバンと叩くので苦笑いを向ける。
「天元様、今回は警護って言ってたし、今頃どこかで休憩でもしてますよーーっ!あんなに大きいんだから飛ばされる心配だってないですし!」
宇髄さんならば、確かに須磨さんの言う通り今頃どこかで休んでるかもしれないし、心配は要らないと思うが、何故か今日は胸騒ぎが止まらなかった。
作ったお弁当を美味しく食べられたかな?なんてことが気になって仕方なかったのかと思い、部屋に戻ったが夜中に降り出した雨があまりに豪雨だったので急に不安に襲われた。
宇髄さんなら大丈夫だと思う。
なのに胸騒ぎは治まらない。
私は何か忘れているのではないか?
大切な何かを。
そこまで考えていたのにも関わらず、私の瞼は眠気で勝手に閉じてきてしまって、気づいた時は朝になっていた。
外はまだ雨と風が強い。
ふと襖を開けると庭には折れた枝やら葉っぱがたくさん落ちていて、今も尚それが舞っている。
しかし、遠くの方が少し明るくなってきているのが見えたので、直に止むのだろうという考えが過り、ほっとしたのも束の間私は大切なことをこの後思い出して愕然とすることとなる。
「川が氾濫しないといいけど…。」
ふと漏れ出た言葉に心臓を鷲掴みされたように感じた。
私は…なぜ今まで気付かなかったのだ。あの親子のことを。
川沿いのあの小さな小さな家のことを。
あの家が…こんな嵐に耐えられたのかなんて…分からない…。
でも、
行かないと。
助けないと!!
暴風雨吹き荒れる中、私は夜着のまま家を飛び出して彼らの家に向かって全速力で走って行った。