第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※
ほの花が差し出してきた経木包みが弁当であることくらいすぐに分かった。
けども……!!
(…嘘だろ、不意打ち過ぎて…。反応できねぇ。)
ほの花から初めて貰った手料理は忘れもしない。誕生日の時に作ってくれた肉じゃがとだし巻き卵。
その時の料理がすげぇ好みで美味かったからまた食べたいと思っていたのに、恋仲でもない状態だったわけで迂闊に頼むこともできなくて時間が経ってしまった。
でも、恋仲となってからのがもっと頼みにくくなっていた。兎に角ほの花が思ったよりも忙し過ぎてこの俺が頼むことすら憚られた。
手料理食べたい欲よりもほの花抱きたい欲のが遥かに強い俺はどちらかと言われたら確実に後者を選ぶ。
…となれば必然的にそこから遠のくことになっていて、任務後の昼ごはんは準備してくれたとき一瞬ぬか喜びしたが、それが雛鶴が作ってくれたやつを持ってきてくれていたのだということには味ですぐに気付いた。
でも、アレだけ抱いて作る時間なんてないか、と思っていたし、それはそれで良かった。
さっき琥太郎の家でほの花が料理を作っていたのは知っていたし、あわよくば食べれると思ったのにまさかの時間切れでそれもあって不満はかなり溜まっていたが、目の前の経木包みを見て完全に吹っ飛んだ。
いや、むしろめちゃくちゃ嬉しい。
何なら拳を握りしめて高く突き上げたいほどに。
しかし、それすらできず感動に打ち震えるという情けない反応しか返せない俺に"要らないのか"と思われたのか、それを仕舞いかけたほの花の手首を慌てて掴まえた。
顔が熱いし、目も合わせられないが、離すまいと強く握りしめた俺にほの花の方から話しかけてくれた。
「…食べてくれるの?足りないかも、しれないけど…いい?」
「…全ッッ然いい…!すげぇ、嬉しい。」
遠慮がちにそう言って俺の顔を覗き込んでくるので照れ隠しで目の前のほの花を思いっきり抱きしめた。
手料理が食べたかったなんて言うことがバレてしまったのではないかとヒヤヒヤしているが、それよりも"今"貰ったことが嬉しくてニヤける口元を止められなかった。