第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※
宇髄さんが忙しいのは分かっているのに稽古つけて欲しいなんて我儘言ってしまって、反省したが、今日だって今から警護なのにお昼ごはんを食べる時間もなかった。
前日情交をした日はいつもより遅い朝ごはんなので私はそこまでお腹は空いていないが、宇髄さんはこれから任務だから力をつけないといけないのに。
今からどこかでお昼ごはんを食べる時間もないし、申し訳ないことをしてしまった…。と、そこまで考えると懐に仕舞い込んでいたあの存在を思い出した。
(…あ、お、お弁当…。ど、どうしよう。こんなの渡していいかな…?)
元々軽食程度なわけで、夜中の警護の時に小腹が空いたら食べてもらおうと思ったのに、昼ごはんには少ないかもしれない。
どう考えも見当違いのお弁当で渡すこと自体が恥ずかしくなってきた。
でも…
もうすぐ家に着いてしまう。
きっと着いたらすぐに準備して行ってしまう。
渡すなら今しかない。
どうしよう…と迷ってる暇もなく、私は宇髄さんの手を引くと、立ち止まった。
「ん?どうした?」
急に立ち止まった私を変に思ったのか振り返ると顔を覗き込んできた。
「…あ、あの…いらなかったら返してくれたらいいんだけど…。」
「ん?何のことだよ?」
「…こ、これ…良かったら持って行って…ください…。」
おずおずと懐から取り出した経木包みを渡すと顔がじわじわと熱くなる。
よく考えたら好きな人にお弁当を渡すなんてはじめてのことだ。
初めてならば余計にもっと手の込んだものを渡せば良かった…!
「…え?へ?な、…?へ?!」
「……え、ど、どうかした?」
「ちょ、ちょい、待って。これ、くれんの?」
「え…う、うん。もし、よかったら…。簡単なものしか入ってないけど…。」
宇髄さんの反応が思ったものと違って私は肩透かしを喰らう羽目になった。
明らかに動揺していて、困惑している彼にやっぱりこんな物いらなかったかな…と引っ込めようとした時、大きな手で経木包みごと掴まれた。
そして、見上げた先には照れたように顔を隠す見たことのない可愛い反応をしてくれている宇髄さんがいた。