第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※
「宇髄さんって初めてあそこに来たんだよね?」
「…そうだけど?」
「何か家の方向も知ってるっぽかったし、あんな草っ原の中に入って行っても全然驚かなかったし、初めて見た筈なのに琥太郎くんに会った時も反応薄かったよね。」
「…ん?そうか?お前が行く前に言ったんじゃねぇの?」
「言ってませんけど?」
どこに家があるとかを行く前に言った覚えはないし、情交中でなければそこまで記憶力は悪い方じゃない。自慢じゃないが、母が残した薬事書を全て一語一句記憶しているのだ。
「…あー、と、そうだっけ?」
「しかも、今、"あんな人気のない所に住んでるのは身を隠すためなんじゃないか"疑ってたから付いてきたみたいなこと言いましたよね?今日初めて来たはーずーなーのーにーー?」
「……だぁーーー!わーったって!白状する!知ってた。悪かった。」
「やっぱり!!何で隠したんですか?!酷いー!!いつから知ってたんです?」
「……お前が遅く帰ってきた翌日に後付けた。」
気まずそうに視線を逸らす宇髄さんの発言に私は腑に落ちることが何個もあった。
あの日、確かに誰かに見られているような視線を感じたし、何故か宇髄さんと家の目前で会った。しかも後ろから現れた。
「何か視線感じた気がしたんだよね…あの日。本当に信頼してないでしょ!私のことー!むーー!」
「ちげぇって…そうじゃなくて、心配だったんだよ。それだけ。他に男がいるかどうかも気になってたしよ。あの狭い家じゃ二人が限界かとも思ったけど、念のためな。」
その発言に嘘はないと思う。
心配かけたのは間違いないし、今日だって宇髄さんがきてくれて助かったのもある。
なんだかんだで琥太郎くんのことも面倒見てくれたし。
申し訳なさそうに苦笑いする彼の行動の全ては自分に繋がっているかと思うと、少し嬉しい気もする。
「…心配、かけてごめんね。今日、来てくれてありがとう。」
「自分の女は自分で守んねぇといけねぇからな。」
そうやって私のことを先回りして守ろうとしてくれる所、大好き。
私は引き寄せられるように彼の手を取り絡ませると笑顔を向けた。