第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※
宇髄さんに向かって何度も何度も挑む姿勢は子どもながらに根性があるなぁと思う。
そんな琥太郎くんに宇髄さんも馬鹿にしたりせずに受け止めてあげているし、よく見たら太刀筋を少しずつ修正してあげているように見えた。
(…優しいんだから。)
やっぱり彼は面倒見がいい。
あんなに喧嘩していたのに結局はこうやって何の稽古かは知らないが、見てあげている。
そもそも柱稽古なんて継子でもなければ、してもらえることなんてない。
継子の私ですら今日はまだしてもらってないというのに。
段々と見ていたら琥太郎くんが羨ましくなってきて、彼が宇髄さんに打ち込んだのをみて、私も宇髄さんに回し蹴りを入れてみた。
「んなっ?!何でお前も打ち込んでくんだよ!」
「狡いじゃん!私だって最近稽古してもらってないのに!!」
「だーかーら!時間が合わなかったからだろ?!」
「琥太郎くん!今よ!」
宇髄さんが私に気を取られている内に体勢を整えていた琥太郎くんにそう言うと、彼は勢いよく宇髄さんに打ち込んでいく。
が、やはり柱にそんな子供騙しは通用しない。
二人して宇髄さんに抱えられてしまうとしょぼんと肩を落とす。
琥太郎くんはともかくとして私までこの様はなんだ。宇髄さんは呼吸すら使っていないというのに。まぁ、私も陰陽道使ってないけど。
「離せーー!おっさん!まだやるぞ!!」
「おーおー、本当に威勢がいいクソ餓鬼だな。残念ながら時間切れだ。俺は仕事があるんだ。また今度な。さっき言った準備運動毎日やれよ。」
そう言うと琥太郎くんだけを降ろしてあげて、シッシッと犬を追い払うように手を振った。
準備運動…ということは本当に稽古つけてあげてたんだ。どういう風の吹き回し…?
自らやってあげてたなんて不思議で仕方ない。
「宇髄さんー、私も降ろしてよー。」
「ん?何でよ。お前は俺の女だから此処にいればいいだろ?」
「荷物まだ家の中なんだから降ろしてーー!」
「ちぇっ。」
そう言うとやっと降ろしてくれたので、目の前の琥太郎くんの手を握って家に向かって歩き出した。