第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※
肉じゃがも南瓜の煮付けもいい具合に煮えて、宇髄さんのお弁当まで作っても未だに戻ってこないあの二人。
「ちっとも帰ってきませんね。宇髄さんと琥太郎くん。」
「遊んでもらってるんでしょうか。申し訳ないですね…。」
あ、遊んであげてる…気は全くしない…んだけど、ああ見えて面倒見はいいし、虐めてたりはしない筈。
しかし、宇髄さんは警護もあるのだからそろそろ帰って準備をしないと間に合わないのではないか。
「…私、呼んできますね。宇髄さん、この後お仕事があるって言ってたので。」
「ええ?!それは大変!」
「お母さん、見てくるので起きれそうであれば起きててください。」
履物を履いて外に出ると、川沿いの近くの草っ原の中で頭一つ出ている宇髄さんを見つけた。
上背がある彼はどこにいてもすぐに見つけられてこういう時は助かるが、ああ見えて身軽で足が速いから逃げられたら捕まえられないけど。
「宇髄さーーん!そろそろ時間ですよー!」
彼に向かって発した声はそこまで大きくないけど、耳の良い彼ならば聴こえるだろうと思ったら、案の定こちらを見て手を上げてくれた。
しかし、こちらに来るそぶりを未だに見せずに草っ原の中で何かを避けている様子の彼に小首をかしげる。
そういえば琥太郎くんの姿が見えない。
キョロキョロと辺りを見回してみるが…いない。
もう一度彼の方に目を向けると、草っ原の中から見えたのは彼に向けられる…木刀?
「…え、な、何してるの?」
慌てて彼の方に小走りで向かうとそこにいたのは草で隠れて見えなかった琥太郎くんで、宇髄さんに向かって木刀を突きつけていた。
その様子を宇髄さんは楽しそうに見ているので益々訳がわからない。
お母さんが言っていた"遊んでもらっている"が強ち間違いではなかったのだろうか?と思わざるを得ない状況に私はキョトンとしてしまった。