第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※
買ってきたものを見渡すとふと思いつく。
お米に海苔に卵…があれば簡易的なお弁当くらい作れるかも…。今日、警備に行くって言ってたし、それなら持っていけるかもしれない。
お母さんにお願いすると、了承してくれたので同時進行でそれも作ることにした。要らなければ私が食べればいいし。
「実はあんまり作ったもの食べてもらったことないんですよ。」
「そうなんですか?きっと宇髄さんなら喜ばれると思います。」
お母さんの言葉の通り、きっと作れば喜んでくれるとは思うけど…。
今更感があってどうも照れ臭い。
食べ物に関しては、雛鶴さんがめちゃくちゃ料理が上手いし、私なんてお呼びでないことくらい分かってる。
宇髄さんが任務で夜いない時は遅めの朝ごはん(ほぼ昼ごはん)を準備するのは私の仕事だが、それすらも雛鶴さんが作ってくれてたやつを温め直したりすることが多いし、一から作って出すことなんてことはほぼない。
仮にも"婚約者"という立場を与えてもらっているくせに私は少しあの三人に甘えすぎだろうか。
私のしていることといえば
自分の部屋の掃除
ころのすけの世話
洗い物など片付け(たまに)
薬師の仕事
鬼殺隊の仕事
以上。
それ以外の家事は概ね任せっきり。
え…?婚約者…?
彼の身の回りのことなど全くしてない。
私はよくこんなんで一丁前にあの三人に嫉妬していたものだ。するならやることちゃんとやってからにしろよ…と頭を抱えたくなった。
しかしながら、私とて時間があるわけでもなく、こう見えてまぁまぁ忙しくて時間がないといえばないのだが…。
(…時間がないは言い訳よね。婚約者なんだから。)
少しくらい彼のために時間を使うことをしなければ愛想を尽かされるかもしれない。
南瓜を切りながら私は自分の甘ったれ加減に悲しくなった。
宇髄さんはもっと甘えていいと言ってるけど、私があの三人に未だにおんぶに抱っこされていることを知らないんだ。
継子としてだけならばそれでいいけど、今の私は婚約者なのだから。
(…それでいい筈がない。)