第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※
しかしながら、子どもであっても悪い虫は早いうちに排除するのが望ましい。
今はよくとも年頃になったときにちょっかいかけられたら鬱陶しいからな。
「悪ぃけど、ほの花のことは諦めろよ。俺の女だからよ。残念だったな。」
「なっ?!べ、別に、俺は!!ほの花がおっさんの毒牙にやられちまうのは可哀想だと思ったからで!!」
「へーへー、残念だがそれに関してはもう遅ぇ。アイツは俺の女なの。」
「く、っ…!か、解放しろよ!!ほの花が可哀想だろ!!」
「可哀想も何もアイツも俺のことが好きなんだから仕方ねぇだろ。」
餓鬼相手に大人げないのは重々承知しているが、とてつもない優越感ににやける顔を抑えられない。
「あんな…あんな綺麗なのに…何でこんな下衆野郎のこと…。」
「おい、地味に貶して来んな。俺様がカッコいいから惚れたに決まってんだろ?一丁前に俺の女に惚れてんじゃねぇよ。」
「………、あんな綺麗な女初めて見たんだ。」
おいおい、今度は素直に認めんのかよ。
いよいよ本気だな、コイツ。一連の流れをほの花から聞いてはいる。
だから琥太郎がほの花に惚れちまう要素は大いにあったと言えるし、そこは仕方ないとは思うが…。
(子どもだろうと容赦はしねぇ。)
琥太郎の前にしゃがんでやると頭をわしゃわしゃと撫でてやる。嫌そうに睨みつけてくるが構わずやってやると、少しだけ大人しくなった。
「…美人だろ?ほの花は。」
大体、突っかかってきてたくせに、今回だけは大きく頷いた琥太郎にふぅ、っと溜息を吐く。
「俺も初めて会った時、そう思った。何て美しい女なんだろうって。」
「…おっさんも?」
「ああ。でも、事情があってすぐには自分の女にはできなくてよ。やっとの思いで手に入れた大切な女だ。」
こんな子どもに元嫁事情やらを話すのは流石に気が引けたので避けたが今度は俺の言葉をちゃんと噛み砕くようにじっくりと聞いている。
その姿は普通の子どもで、周りに頼りになる大人がいなくて大人ぶるしかなかったんだろうなと少しだけ不憫に思った。
(…それでも、お前には絶対やらんけど。)