第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※
「ほの花さんの良い人なんですか?ふふ。素敵な方ですね。」
宇髄さん達が出て行くとお母さんに矢継ぎ早にそう聞かれてしまい、私は顔が熱くなった。
良い人なのは間違い無いのだが、そう口に出して言われてしまうとどうも気恥ずかしい。
「あ、そ、そうなんです。私には勿体無いほどの方で…!今日も荷物持ちを自ら申し出てくれて…。突然一緒に来てすみません…!」
「そんな…!謝られるようなことは何ひとつありません…!こちらがしてもらうばかりで何のお返しもできていないのですから…。」
申し訳なさそうに頭を下げたお母さんだが、日に日に顔色は良くなっていて自分が薬師の娘で知識を得ていて心底良かったと思えた。
こうやって元気になってくれた人を見ると、やり甲斐のある仕事だなと思うけど、里にいるときはやりたいとも思っていなかったのだから不思議な縁だ。
「いえいえ!勝手にしてることですし、将来琥太郎くんに甘味買ってもらうの楽しみにしてるんですよ。」
「私も元気になった暁にはお二人に御礼をさせてください。本当にありがとうございます…!」
薬の調合をしながらお母さんと談笑していると、ふと宇髄さんと琥太郎くんは大丈夫なのだろうか、と気になったが、私が行ったところで喧嘩してるのは目に見えてる。
しかし、一度考えてしまうと気になってしまうのが人間というもので…
「あの二人…大丈夫ですかね?すみません。宇髄さんが大人げなくて…。」
「何を仰いますか!うちの琥太郎が失礼なことばかりいうからです…!本当に口が悪くて…。」
「いや、その…宇髄さんも口悪いのでそこは五十歩百歩と言いますか…。」
「いえいえ、ほの花さんのために頭を下げれるなんて素敵な方ですよ。私が不安にならないようにきちんと挨拶してくださったもの。ほの花さんはとても見る目があると思いますよ。」
お母さんがそう言ってくれると胸が熱くなった。
自分が褒められるよりも自分の恋人が人から褒められる方が100倍嬉しく感じる。
ニヤける口元を元に戻せず、私は下を向いて喜びを噛み締めた。