第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※
「琥太郎くーん!!」
ほの花が大きく手を振って琥太郎と呼ばれる少年のところに小走りで向かうと、一瞬こちらを向いて笑顔になったが、すぐに後ろにいる俺の方を見て怪訝そうな顔をした。
昨日の今日で借金取りにでも見えたのかもしれない。体デケェしな。
目の前まで来たほの花を見ながらも俺のことをチラチラと確認してくるソイツからは好意的な感情は見受けられない。
「琥太郎くん、偉いね!薪割りしてたの?」
「え、あ、ああ。そうだけど…、ほの花、ソイツ誰?」
あ?コイツ、今俺の女のこと呼び捨てにしたか?途端に俺の感情は苛つきに染まるのに、ほの花は大して気にもせずにニコニコしてやがる。
「あ、えとね、宇髄天元さんって言うの。お野菜とかお米とか運ぶの手伝ってくれたんだよ。」
「……そりゃどうも…。」
「おい、餓鬼。"ありがとうございます"だろーが。しかも、ほの花のこと呼び捨てにすんな。」
「あ?おっさんには関係ねぇだろ?別にほの花が駄目って言ったわけじゃねぇじゃん。」
「あん……?」
明らかに喧嘩腰な俺と琥太郎という少年にほの花がオロオロと間に立って宥めようとしているが、一瞬で分かった。
コイツとは年齢が離れてはいるが……
(…俺の女に惚れてんじゃねぇよ。)
睨みつけるように視線を向けてくる琥太郎にこちらも大人げなく睨みつけてやる。なかなか骨のあるやつのようで俺の睨みにも臆することなく睨んでくるところだけは認めてやろう。
「お、おっさん…って、琥太郎くん!お兄さんだよ…!お兄さん!」
「俺からしたらおっさんだろ。変な男連れて来んなよな、ほの花!」
「だ、だから…食材運んでくれて…」
「じゃあもう用は済んだな。おっさん、"ありがとうございました"!」
苦言という苦言をぶつけてきやがった琥太郎はほの花の手を掴んで家の中に入ろうとするので大人げなく足で進路を塞いでやった。
「…話は済んでねぇよ。餓鬼が。」
地を這うような声にほの花のがビビってこちらを怯えた目で見ていて呆れた。
(…お前がビビってどうすんだよ…。)