第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※
宇髄さんと二人でお出かけするのはあの帰省以来のこと。お互いの任務などで時間が合わず、専ら家で体を重ねることしかしていなかったのでこうやって町を一緒に歩けるだけでも嬉しい。
しかし、先程浴衣を仕立ててくれるという発言に対して自分が言った言葉を掘り下げられなくて良かったと心底思った。
あの浴衣は呉服屋を営んでいた私の元縁談相手の真田清貴さんに頂いたものだったから。
たまたま持ってきた夏用の浴衣がそれだったので、「持ってる」なんて言ってしまったが、二度と袖を通さない方が良さそうだ。
「ちぇっ、買いすぎだろ。お前と手も繋げやしねぇ。」
「…ご、ごめんね!」
ほら、ただでさえ、"私のものを買いに来たわけではないのがムカつく"というよく分からない理由で機嫌が悪いと言うのに。
それでも率先して荷物持ちを買って出てくれているのだから、せめて気持ち良い気分でいてほしい。
しかし、こう言う時の機嫌の直し方なんて彼に関しては卑猥なことしか思い浮かばない。
恋人としてひょっとして凄く失礼なのかもしれない。……が!事あるごとに「一発ヤる」発言を駆使してくる彼に致し方ないとも思う。
どうしたらいいか分からず、彼の腕にちょんと掴まって上背のある宇髄さんを見上げてみる。
「…、誘ってんの?」
「……誘ってない、けど、機嫌直らないかなって思って…。」
こんなところで抱き締めたり、口付けたりできないし、手を繋ぐにも彼の言う通り手が塞がっている宇髄さん。
手を繋ぐことは出来なさそうなので、腕に掴まってみただけのことだ。私自身、こんなことで機嫌なんて直らないか…と、諦めの境地だったが、意外にも鼻歌など歌い出した彼に目を見開いた。
「もっとくっつけよ。」
「え?あ、…うん!」
宇髄さんがこちらを見下ろすともっとくっついてもいいと言うのでぎゅうっ、ともっと腕に抱きついてみる。
「手を繋ぐとはまた違った楽しみがあるな。」
「違った楽しみ?」
「お前の乳が腕に当たってなかなか良いぞ。」
それを聞いた瞬間急いで離れるが、時すでに遅し。ニヤニヤと笑っている宇髄さんの機嫌は直ったようだが、私の顔に熱が溜まり、暫く恥ずかしくてたまらなかった。