第3章 立ち振る舞いにご注意を
俺はあくまで仮説と前置きした上で自分の見解をほの花に伝えてみた。最初は興味深そうに聞いていたが、最後の方は悲しそうに俯き、唇を噛み締めていて見ていられなった。
「…父が望んだ、というのは何となくわかる気がします。正義感の強い人でしたので。」
「まぁ、あくまで仮説だ。本当のところはわからねぇけどよ。」
「…ありがとうございます。宇髄さんに話して良かったです。お陰で少しスッキリしました。」
その顔はまだ完全に受け入れたわけではなさそうだが、疑問だったことが解消してスッキリしたのは本当のようで漸くこちらを見てくれた。
「俺が考えてやれるのはこれくらいだが、お館様ならもっと詳しく知ってるんじゃねぇか?明日会うんだろ?聞いてみたらどうだ?」
お館様の薬師として付き合いがあったのであれば陰陽師の家系のことも知っていたように思う。そうでなければあの時"呼吸はいいから実戦の戦い方を教えてやってくれ"と言うだろうか?
継子にするならば、呼吸をまず教えないといけないところあの方は"呼吸はいいから"と言った。
それは遠回しに、呼吸を使えなくても鬼を斬る方法を心得ているから必要ないとも聞き取れる。
実戦での戦い方だけであれば、誰の継子にしようと構わないのに敢えて俺を選んだのはあそこで出会う前に一度会っていたからだろうか。
そんなことを考えても机上の空論だが。
「そう、ですね…!明日、産屋敷様に聞いてみます!お時間取らせてすみませんでした。明日はお仕事があるんですよね?もう休んで下さい!ありがとうございました。」
そう言うと深々と頭を下げてくるほの花の頭をポンと撫でると立ち上がった。
「ま、俺は継子想いの優しい師匠だからな。」
「ふふ…。はい、師匠!」
軽口を叩いてみたのは少しでもほの花の気分が良くなるようにと願っていたから。
そして、これ以上此処にいると悲しそうに笑う彼女を抱き締めてしまいそうになったから。