第3章 立ち振る舞いにご注意を
ほの花の話を聞いても自分の浅い知識ではちゃんと理解してやることができないので詳しく聞こうと背筋を正すと彼女に質問をしてみた。
「実際にはどんなことができるんだ?」
「…信じてくれるんですか?」
しかし、顔を上げた彼女が驚いたようにそんなことを言うものだから呆れてズッコけそうになった。大体適当なことを言うならばこんな場を設ける必要ないだろう。
「当たり前だろうが。お前はそんなこと嘘つかねぇだろ。」
「……うう、宇髄さん…!ありがとうございますぅーー!!」
「お、おいおい、泣くなって。話の筋がズレるだろうが!」
「あ、ああ!出来ること、でしたね!すみません…。」
それからほの花の話をじっくり聞いてみて見えてきたことは、同じ兄妹でもできることが違ったということ。
兄が四人いてもそれぞれに得意分野があったと言う。
占星術、式神、呪術…。
ほの花はその中でも式神を得意としていたとのことで戦いでそれを使い、敵を攻撃するらしいのだが実際に使ったことはないらしい。
正しくは父を討った時に使ったかもしれないがひどく動揺してて覚えていないと言う。
そして多くの陰陽師が出来たこと"鬼門封じ"鬼の逃げる出口を封鎖することらしい。
しかし、それを聞いた瞬間、鬼に狙われた理由を潔く理解した。
陰陽師の一族が身を隠して、自分達の能力を今の時代の人間にも知られないようにしてきたのは鬼を討つ機会を窺っていたのかもしれない。
しかし、志半ばでほぼ全滅。
鬼と化した父親をほの花が討ち取ることができたのはそれを望んでいたからだろう。
鬼として生きるくらいならば、自分の娘にとどめを刺されて逝きたかった。だから首を斬らせたのではないか。
実戦で鬼の首を斬ったことのないほの花が正確にそれが出来るとは思えない。しかも父親は兄四人を喰らっていたならば力が増強しているはずだ。
仮説ではあるが、恐らくほの花は無我夢中で鬼門封じを使い、父親が自ら彼女の攻撃を受け入れて首を斬られたことで絶命したというのが一番濃厚だ。
誰も悪くない。悪いのは鬼だ。
ただ…ほの花の気持ちを考えると居た堪れない気分になった。