第19章 まだ見ぬ先も君といたい。【其の弍】※
琥太郎くんの家に行くためには町を抜けなければいけないので、宇髄さんと並んで歩いているのだが…彼といると本当に目立つ。
六尺を超える大きな身長に恵まれた体格、それに付け加えて女性がチラチラと見るほどの美丈夫。
陳腐な自分が隣にいると恥ずかしいのではないかと思いながらも手を繋いでくれていることが少し優越感を感じられる。
自分の恋人だと周りに分かってもらえていればいいのだが…。
隣の彼を見てため息を吐くと、今日もあの家に食材を調達しなければと思い出す。病気は薬だけでは治らない。栄養をたくさん摂って免疫力を上げなければ。
一番近くにある八百屋さんに寄ろうと思い、宇髄さんに声をかけた。
「あ、宇髄さん、こっちです!」
「は?こっちだろ?」
「え?あ、いや、家はそっちなんですけど、八百屋さんに寄りたくて…。」
「あー、そゆことね。分かった。」
そこで少しの違和感。
宇髄さんには家の場所を伝えてないのに何で方向が分かったのだろうか。まぁ、そっちの方向にずっと向かっていたわけだからそう思うのも分からなくはないが…。
「ほの花ー?八百屋行くんだろ?」
考え込んで少し立ち止まってしまった私を前から宇髄さんが呼ぶ。
ただの違和感だけで、彼の様子は至って普通。
差し入れを持っていくことに対しても特に何も言わない。
彼が私に隠し事をするようなことはないだろうし、あったとしても悪いようにする人ではない。
そこまで考えると感じていた違和感を頭から消し去る。
(いま考えても仕方ないや。気になるならあとで聞いてみよ。)
止まっていた足を彼の方へと向けて歩き出すと手を差し伸べてくれる。
それに自分のものを絡ませると八百屋さんに向かった。
「何買おっかな〜。」
「いつも買ってんの?」
「うん!栄養足りてないからね、あの二人。」
「んじゃ、たくさん買っていかねぇとな。今日は俺が持ってやれるし。」
確かにこう言う面でも宇髄さんが今日ついてきてくれたのはありがたい。いつもちょこちょこ買うしかなくて、困っていたのも事実だ。