第18章 まだ見ぬ先も君といたい。※
宇髄さんからは怒りの感情は感じられないが、怪我の理由を知りたい。納得できないという気持ちが伝わって来た。
これ以上、彼に言わないでおくのも無理な話で、話すべき相手だと言うのも重々分かっているつもりだ。
一つ息を吐くと宇髄さんの膝から降りて彼と向き合った。
「…あのね、まずね。浮気とかしてないからね?それだけ最初に分かってくれる?」
「…分かってる。そんな風に思ってねぇよ。理由を知りたいだけだ。」
ちゃんとそこは理解してくれているようで頭をポンと撫でてくれた。
元々宇髄さんはちゃんと話を聞いてくれるし、相談したら親身になって考えてくれるような人だ。
ただ私が自分で勝手にしたことだからと彼を巻き込みたくなくて言わなかっただけのこと。
「琥太郎くんって子とね、出会ったの。その子、最初食べ物を盗んでしまって店主の人が追いかけているところを私が捕まえたの。」
「へぇ、お手柄じゃねぇか。」
「それだけ見たら、ね…。でもね、よく見たらその子、履物も履いてなくて、着てる物もボロボロで、お母さんが病気だって泣きそうな声で言うの。とても嘘ついているように見えなくて、その場は私が支払って穏便に済ませてもらったの。」
「……そういうことな。」
宇髄さんは最初の出会いのことを聞いただけで、少し納得したようで悲しそうな顔をした。そう、これは決して私のお手柄話でもなければ、情けをかけて欲しいと言うお涙頂戴話でもない。
どうしようもできないことをどうにかしようとしてしまった私の自分勝手な独りよがりな行動に過ぎないのだ。
「貧富の差って全国どこに行ってもあると思うし、独りよがりなことだって分かってたけど、放っておけなくて…首を突っ込んじゃったの。お母さんはやっぱり病気だったし…。どうしても放っておけなくて…。」
宇髄さんは大きくため息を吐くと、私をじーっと見つめて赤くない方の頬を引っ張った。
でも、その顔は優しく微笑んでいて摘まれた頬もすごく温かく感じた。