第18章 まだ見ぬ先も君といたい。※
「とりあえずお母さんを離してください。病気なんです。体に障ります。」
私はその男からお母さんを奪い取ると涙目で震えていた琥太郎くんと部屋の中に押し込み、その男達と対峙する。
正直、腕っぷしに関しては男四人相手にしてもなんら問題ないが、此処で下手に手を出してしまえば、私ではなくこの親子に倍返しでもされたら溜まったもんじゃない。
「おい、嬢ちゃん。あんまり俺らを怒らせんなよ?何してくれんだ。」
「兄貴、でも、こっちの女のが高く売れんじゃないっすか?!」
「そうっすよ。かなり美人っすよ。」
「ぼろ儲けっす!」
それを聞いてしまえば、あの請求額が違法な金額だということはわかる。
どうせ借りたのは数円の間違いだ。ぼったくって身売りしようだなんて悪行。鬼の所業だ。
鬼も酷いものだが、人間だってこういう輩はいる。
「私は身売りなんてしないし、この金額も払わないです。こう言うことは良くないです。やめてください。最初にお借りした元金と相場の利子ならば私がお支払いしますので。」
こう見えて神楽家は旧家だが、貯えはあったし、私だってお給金をもらっているのだから数円のお金であればすぐに払える。
弍千円なんて大金も全財産掻き集めれば払おうと思えば払えるかもしれないが、それではこの人たちの為にもならない。
逆上させて、琥太郎くん達に被害が出てしまえばそれこそ最悪な事態だ。
「そんなもんで済むと思ってんのかよ。あ?」
凄んでもらっても全く怖くないのだから早いところ話をつけたい。こちとら鬼と対峙してきたし、もっと怖い般若のような顔をした恋人に怒られたこともあるわけで…。
「では、どんなもんでしょう?私に出来る限りのことはさせてもらいますが、あの金額はぼったくりです。法外な金額は罰せられますよ。」
淡々と冷静になって対応している私が余計に腹が立ったのか腕を掴み上げられると琥太郎くんの家の壁に押し付けられる。
「…口のたつ女は嫌いなんだよ。」
「…奇遇ですね。私も貴方のことが嫌いです。」
次の瞬間、パンッと顔を叩かれた。
この場合、吹っ飛んだ方が良かったのだろうかと冷静に頭で考えるが、痛くもないし、大した力でもない攻撃に妙に残念感が湧き起こりため息を吐いた。