第18章 まだ見ぬ先も君といたい。※
「産屋敷様、いつもありがとうございます。おかげで少し腑に落ちました。」
「それは良かった。小耳に挟んだんだけど、最近鬼殺隊のみんなにも薬を処方してくれてるんだって?ありがとう。忙しいと思うから僕のことは気にしないでいいからね。」
「な、何を仰いますか!!産屋敷様が最優先です!あなたがいらっしゃるのといらっしゃらないのとでは士気が全く違います!どうか、産屋敷様こそ私のことはお気になさらず。」
此処に来るまで母の見様見真似でしたことしかない薬師の仕事。
お金をもらって薬師の仕事をさせてもらえているのは彼が最初に認めてくださったおかげ。
この仕事に誇りを持ち始めたのは宇髄さんが応援してくれたおかげ。
私の礎を築いて下さったと言っても過言ではない方への感謝の気持ちは計り知れない。
「鬼殺隊である以上、鬼の殲滅にも心血を注ぎますが、産屋敷様の専属薬師でもある以上…貴方のお体に関しては最後の最後までお仕えさせてください。それが神楽家の生き残りとしても必要な選択だと思っています。」
母はよく言っていた。
医師は治す。
看護師は寄り添う。
薬師は患者様の痛みや苦しみに最後まで向き合うことが大切だって。
どんなに治らない病気だとしても、薬師ならば最期の最期までその痛みを取り払う手伝いができる。患者様の望む方法で薬を処方してあげられる。
それが薬師の一番の強みだって。
人はいつか絶対に死ぬ。
鬼でなければ必ず。
でも、大切なのはその時が来るまでどう生きるかだと思う。
家族を失って悲しみに暮れていたこともある。
今だってたまに思い出すこともある。
その頻度が確実に少なくなってきたのは間違いなく宇髄さんのおかげで、彼のおかげで私は生きる希望を見出した。
今ならば亡くなった家族のことを悲しむだけでなく、最期まで立派だったと思えるし、自分もその時が来るまで後ろ指を差されないような生き方をしようと心から思える。