第18章 まだ見ぬ先も君といたい。※
翌日、産屋敷様の家に行くときは薬師として不備がないようにあらゆる事象を想定して万全の体制で向かう。
そのため荷物も多いが、不測の事態に対応することも可能だ。今のところそんな事態に陥ったことはない。ただし、産屋敷様の体の状態は安定はしているもののゆっくりと悪くなっているのは間違いなくて、すぐに調合を変えられるように準備している。
ありがたいことに薬師として鬼殺隊の中でも信頼していただいているのは産屋敷様や宇髄さんのおかげでもあるので、彼らを裏切るような情けない仕事はできない。
「ほの花、天元とはうまくやってる?」
「え、あ…あはは…。は、はい。お陰様で…。あの…あれ以来喧嘩はしてないです。」
「そっか。よかった。天元はほの花のことになると子どもみたいなところがあるからね。」
「……!!わ、分かります…!物凄く分かります!」
思わず食い気味に答えてしまったが、的を得た産屋敷様の発言に大きく頷いた。
愛してくれているのは分かっているが、彼はそれを恥ずかしげもなく私に言ったり、周りの人にもちゃんとそれを伝える素直さがある。
生娘期間は長くて、無駄に頭でっかちになってしまった私が、そんな包み隠さない愛情表現に戸惑っていたのも事実で、はずかしがってなかなか同じようにできないことが彼の中で不満になっていたのかもしれない。
それが回り回って、私が甘えてくれないという発言に至ったような気もする。
「ハハッ。そうだよね。でも、ただ純粋にほの花のことが好きでたまらないってだけで、凄く頼りになる男だと思うからほの花もたまには甘えてみればいいんじゃないかな。」
「あ、甘えてるつもりなんですけどね…。なかなか納得してもらえなくて…。」
「天元の懐はほの花に関してだけは海よりも広いということだね。甘え過ぎかなと思うくらいが彼にとってはちょうど良いと思うのかもしれないよ。」
産屋敷様は本当に先見の明があると思う。
先を見通していて、私が困っていることや疑問に思っていることを簡単に解消してくれる。
薬を処方しているのは私でも、迷った心に薬を塗ってくれるのは彼の言葉のような気がした。