第3章 立ち振る舞いにご注意を
吸い込まれるんじゃないかと思うほど澄んだ瞳。
艶のある栗色の髪。
細くて長い手足に柔らかい肌。
花のような良い匂い。
花もはじらうような笑顔。
頭の中から離れないほの花の姿。
本当にどうかしている。
夢にまでアイツが出てきたときにゃ、これは本格的に駄目だと心に一線を引くことを決めた。
もちろん継子を引き受けた以上、ある程度は関わっていかなければならないわけだから、コイツは継子だと言い聞かせてそれ以上踏み込まないようにした。
表向きとは言え、嫁が三人居る以上、面倒ごとになるのは御免だ。
厳しくしなければ甘やかしたくなってしまう。
病み上がりでこんなに厳しくして体は大丈夫だろうかと途中で心配になったが、思った以上に根性があるやつでそんな心配は吹き飛んだ。
今ならまだ引き返せると思っているのに、肝心の嫁三人がほの花のことを事あるごとに引き合いに出してくる。
嫉妬…というわけではないと思う。俺たちは家族のようなものだ。
だからそういう類の感情でほの花を傷つけたりはしないと思うが、どちらかと言えば餌(ほの花)をチラつかせて俺を煽ってきやがる。
手出せないだろ?
悔しいだろ?
ってこれ見よがしに同性の特権でほの花に引っ付いているのは腹が立つ。どうもする気はない。
ほの花は継子なだけ。
それ以上でもそれ以下でもない。
あんなに美しい女を初めて見たから物珍しいだけのことだ。
「ほの花様って何故か昔から女性に好かれるんですよねぇ…。」
「…あ?」
「あ、すみません。独り言です。」
護衛をしていた三人の内の一人、大進が急にそんなことを言い出すものだから驚いた。
「あー、でも分かるかも〜!ほの花さんってめちゃくちゃ美人で性格も可愛らしいけど、背がすらっと高いから何だか格好いいですもんね!」
まきをがそう納得するように言えば、雛鶴もうんうんと頷いていて、女の考えや感覚はわからないが…自分のこの衝動的な感情も彼女達の抱くそれと似ているのだと思い込むことにした。