第18章 まだ見ぬ先も君といたい。※
「症状…は、夜中に咳が出ると止まらなくて…。それが少しつらいですが…ほの花さんのおかげですごく良くなったので…!」
咳は確かに出るだろう。肺に炎症があれば、それによって咳や痰が出るのは仕方ないことだ。
「痰は絡みます?」
「え…?あ、えと、少しだけ…。でも、本当にもう大丈夫ですよ?十分してもらったので…。」
「では、お薬追加しておきますね。」
「母ちゃん!俺が将来絶対にほの花に返すから!だからちゃんと診てもらってよ!」
遠慮するお母さんを尻目に琥太郎くんがそう言ってくれるので、それ以上は何も言わずに黙ってこちらを見ている。
私は昨日よりもたくさんの種類の薬を持ってきていたので、その中から咳止めと痰切れをよくする処方すると琥太郎くんに手渡した。
「これが咳止めの薬でこっちが痰切れを良くするお薬。昨日渡した抗菌薬は必ず飲みきってね。飲み終わっても肺の状態が良くなければもう少し続けるから。今日渡したものも食後ね。」
「分かった。ほの花、本当にありがとう!俺、絶対に返すから!」
「ふふ。うん、待ってるね。あと、これは私から差し入れ。これは返さなくて良いから私の好意として受け取ってね。」
こんな小さな子に"返せ返せ"と言い過ぎると今度はこれが心の傷になる可能性もあるし、あくまで出来そうなところは返してもらおうと決めていた。
勝手に気になって
勝手に買ってきて
勝手に押し付けた
私はそう言うお節介焼きな女だと思われていい。
「え、で、でもさ…」
「気に入らなかったら捨てていいよ…。でも、使ってくれると嬉しいなぁ…なんて。」
私は狡い。
こう言えば彼は断らないと思った。
案の定、深々と頭を下げると「ありがとう!」と言って、お母さんの寝ている布団を替えてあげている。
「…ほの花さん、本当に何とお礼をすればいいか…!」
「お礼なら…私は薬師なので私の薬が効いて早く元気になってくれることです。さ、またご飯作りましょう!今日は早めに帰らないといけないんです。」
約束したわけではない。
でも、宇髄さんがニコニコして見送ってくれたことが嬉しくて、今日は彼の喜ぶことをしたいと心が訴えていたから。