第18章 まだ見ぬ先も君といたい。※
時刻は午後八時
遠方の警護だったので夕方には帰宅していた俺はほの花と戯れようと思っていた。
しかし、部屋にもいないし、厠にもいないし、温室にもいないし、居間にもいない。
どこに行ったかも誰も知らない。
ころのすけだけが俺の足に纏わりついてくるので仕方なく抱きあげてやるが、待てど暮らせど帰ってこない。
いつも遅くとも午後七時までには帰ってくると言うのに、今は午後八時だ。
「遅ぇ、遅すぎる…!」
「て、天元様、少し落ち着いてください。ほの花さんだって子どもじゃないんだから大丈夫ですよ…!」
「何が大丈夫なんだよ。アイツ、クソ可愛いんだぞ?!どうすんだよ、誰かに手篭めにされてたら!!」
「やだなぁ!ほの花さん強いじゃないですか。手篭めって…!そんなことするの天元様くらいじゃないですか?!あっははは!」
「はぁ?何つった?」
「ご、ごごめんなさいいい!!」
須磨の冗談も冗談に聞こえなくて上から見下ろしてしまうと、雛鶴とまきをに止められる。
正宗たちも落ち着かせようと色々言ってくるが、それどころじゃない。
こんな時間まで帰ってこないなんて、何かあったと思ってもおかしくない。
鬼でも人間でもほの花に手をだすヤツはマジで切り刻んでやりたい。
そんな風に荒れ狂っている俺の機嫌を直せるのなんてたった一人しかいなくて、おそらくそこにいる誰しもが同じことを思っていたと思う。
だから「ただいま〜」という暢気な声が玄関から聴こえてきた時は秒でそこまで向かうとその声の主を思いっきり抱きしめた。
「うわ、…!!び、びっくりしたぁ…!あ、宇髄さん、おかえりなさい。」
「おかえりなさい、じゃねぇよ。遅すぎんだろ!門限作るぞ、テメェ。」
「えー?門限?!私は二十歳なんだけど…。」
「うるせぇ!首に縄つけとくかどっちか選びやがれ!!」
「……え、ど、どっちか?!じゃあ、門限にする…。」
(((え、そこの究極の二択選んじゃうんだ…?!)))
キョトンとしながらも俺の気持ちを宥めてくれるような笑顔を向けられると簡単に絆される自分は随分と簡単な男だ。
それでも、ほの花が居ないと心にぽっかり穴が開いたように感じるのだから仕方ない。