第18章 まだ見ぬ先も君といたい。※
琥太郎くんにご飯の炊き方を教えて、買った野菜や魚を焼いた。
久しぶりにごはんの匂いを嗅いだのかもしれない。二人とも目には涙が溜まっていて、何だかこちらまで泣きそうになった。
自分が如何に幸せなのか思い知ったし、改めて宇髄さんにも感謝の気持ちでいっぱいになる。
真新しい毛布をお母さんにかけてあげると、あまりの手足の冷たさに驚いた。これでは本当に治るものも治らない。
医療の領域…というより間違いなく看護の領域だ。
体がつらくても、琥太郎くんもいるし…、お母さん自身も誰にも頼れなくてつらかったことだろう。
「本当に…本当に、ありがとうございます、ほの花さん。誰かに頼ろうにも…だ、誰も助けて下さらなくて…、もう、死ぬしかないのかな…って思ってました…。」
「母ちゃん!死ぬなんて言うなって!大丈夫だって!俺、大人になったらちゃんと働いてほの花に返すから!」
「こ、こら!ほの花さんって言いなさい…。ごめんなさい。働いてばかりでちゃんと言葉を教えてなかったせいか…。」
「あ、あはは…。だ、大丈夫です。」
「口が悪い人は見慣れていますので…」と此処まで出かかったがぐっと飲み込んだ。
今の今まで彼に感謝していたのに、そんなことを言うことが憚られたからだ。
(口が悪いくらい大したことじゃない。優しいから。宇髄さんは。)
宇髄さんのことを脳内で必死に庇ってみるが、思い浮かべてしまったこと自体失礼だ。
しかし、さっき提案した内容を琥太郎くんは了承してくれて、私たちの貸借条件は双方合意の上、締結したと言っていい。
"返す"ことを念頭に甘えてくれるのであれば全く構わない。頼る人がいないのは仕方ないのだから。
漸くごはんが炊き上がるとお母さん用にそれをお粥にして、ふと外を見ると真っ暗で私の背筋が凍った。
(…や、やばい…。やばいぞ。)
私は今日のところは帰ってまた明日来ようと思い、琥太郎くんにお母さんの食事と薬を頼み、帰宅することにした。