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陽だまりの先へ【鬼滅の刃/音夢💎】R指定有

第18章 まだ見ぬ先も君といたい。※





家に帰ると、琥太郎くんは綺麗に拭き掃除を終えていて、意外に几帳面な性格だということが分かる。
お母さんも心なしか嬉しそうに息子の姿を見ていてほんわかした気分になった。


「ただいまー!琥太郎くん、すごいね!綺麗ー!私より掃除上手いかも!!」

「べ、別に普通にやっただけだろ…。」


照れ隠しでプイッとそっぽを向いてしまったけど、お世辞でも何でもない。子どもにしてはとても綺麗にできている。

私は彼の前に屈むと、「はい。」と履物を渡す。
それを見た瞬間、目を見開いて私の顔を見てふるふると頭を振る。
お母さんも一連の流れを見ていて「い、いけません…。」と私を制してくるけど、もう決めたことだ。

彼の足を取り、それを履かせてあげると背中をポンと撫でた。


「これね、貸してあげる。いつか大人になってさ、お金稼げるようになってら私に甘味でも買ってくれない?今回のも全部貸しだから。」

「…か、貸し…?」

「野菜を買うにも、履物を買うにも、薬を買うにも…生きるためにもお金は必要だよ。でも、無いからって道を踏み外すことは駄目。だったらこれからは私を頼っていいよ。ちゃんと助けるから。大丈夫だよ。つらかったね。お母さんの病気が治るまで私が助けるから。」


この行いが良いのか悪いのかは分からない。
でも、誰しもがそれを判断することはできない。

周りに頼る人も居なければその人は野垂れ死ぬしかないのかと聞いたらそれは絶対におかしい。
子どもなのに物を盗んで生計を立てなければいけないなんて絶対におかしい。

周りの大人が助けてあげないといけないはずだ。
お母さんだってなりたくて病気になったわけじゃ無い。
一生懸命に生きてる人が見捨てられていいわけがないんだ。


少なくとも私はそう思うし、そう思うからこそこの親子を助けると決めた。

誰に何と言われようとこの人たちがちゃんと暮らせるようになるまで"貸す"だけ。

ちゃんと返してもらう。

でも、そこに借用書は要らない。

履物を履かせてもらって、涙を流して喜ぶこの親子が助けるに値しない人だとは決して思わないからだ。


私の責任において
私が勝手にすることだ。


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