第18章 まだ見ぬ先も君といたい。※
私は隊服の袖をまくると母親のそばで正座していた琥太郎くんに向かって声をかけた。
「よしっ!琥太郎くん!掃除して、洗濯して、ごはん作るよ!教えてあげるからお母さんのことは暫くあなたがやってあげてね!」
驚いたような顔をしたが、真面目な顔をして大きく頷いたのを見て頬を緩ませる。
(…教えてもらわないとそりゃわからないよね。)
寝ているお母さんに声をかけて家事をさせてもらうことを了承してもらうと申し訳なさそうに泣いて何度も謝ってくれるので笑顔で制した。
「私の母が言ってました。一番の薬は"笑うこと"だって。お母さん、泣かないで、笑ってください。」
私は一度拭き掃除を琥太郎くんに頼むと、町に向かって必要な物を買いに行くことにした。
一人では持ちきれないから…
今日のところは
寒そうな布団に追加する用のふかふかの毛布と二人に温かい着物を買い足して、琥太郎くんに履物を購入した。
この寒いのに裸足で走り回っていたらいくら子どもでも赤裂で切れてしまう。
貧富の差…と言うのはどこにでもあるが、私は正直そういうこととはありがたいことに無縁で暮らしていた。
今も今で、鬼殺隊としてのお給金もあるし、普段の生活は宇髄さんが全面的に面倒を見てくれている状態で不自由したことは一度もない。
一人を助けたら他の人も助けなければそれこそ不平等だと思われても仕方ないかもしれないが、私はこの一連の行動の落とし所をちゃんと決めていた。
そうすることで自分の行動をも正当化しようとした狡い大人だが、それでも関わってしまった以上最後まで面倒みることが私にできることだと思うから。
早く帰らなければ、私が家に帰るのも遅くなってしまって…
「……う、宇髄さんに怒られる…。」
それだけで済めばいいのだが…
「……お、お仕置きもされちゃう…。」
そんなことまで思い浮かぶものだから私は全速力で琥太郎くんのお家に急いだ。