第18章 まだ見ぬ先も君といたい。※
「あの…おいくらですか?今回は私が払いますので、穏便に済ますことはできないでしょうか?」
「はぁ?!何であんたが?」
「まだ子どもです。逆上して再犯をする可能性もありますし、此処では穏便に済ませた方がよろしいかと。」
ゆっくりと諭すようにそう伝えてみると少し考えてくれているようだったので、懐からお札を出すとそれを差し出した。
「おつりは要りません。どうぞ、お納めください。」
明らかにそのお札の金額は多いが、それくらい渡さないとこの子の腕を引っ張って本当に警察に突き出しそうだ。
もちろん、盗んだ方が悪いに決まってるが、この人の子ども相手に大人げない態度も目に余る。
お札を奪い取るとふんっと鼻を鳴らして踵を返したその人は私に向かって指を差した。
「今回だけだからな!またやったらあんたに責任取らせるからな!」
「承知しました。ありがとうございました!」
人を指差してきたことは少しムッとしたが、最悪の事態だけは免れたので、深々と頭を下げると町の外れまで小走りで向かってその子を降ろした。
助けられたのが恥ずかしかったのかプイッと目を合わせないが、小さな声で「ありがと…」と言ってくれたので頭をぽんぽんと撫でてみた。
「や、やめろよ!子ども扱いすんな!」
「ああ、ごめんね。きみ名前は?私はほの花。神楽ほの花。」
「……琥太郎。」
「そう、じゃあ、こたちゃん宜しくね。きみのお家はどこ?送ってくね。」
「こ、こた、ちゃん…?!おまえ、変な呼び方すんなよ!」
顔を真っ赤にして少し後退りをするこたちゃん。年頃だからそう言うの恥ずかしいのかな。
「え?やだ?じゃあ琥太郎くんなら良いの?こたちゃんのが可愛くない?」
「可愛さ求めてねぇよ!!!」
「そうなの?仕方ないなぁ…、じゃあ琥太郎くんにしとくよ。絶対こたちゃんのが可愛いのに。」
不満気にため息を吐くが、それよりもっと大きなため息を吐いた琥太郎くんに意外に精神は大人びてるなぁと感心した。