第17章 君色日和※
早めに任務が終わったのでほの花の病室に行くために歩いているとアオイに呼び止められて茶を渡された。どうやら来客が来ているらしい。
俺が来たことで慌ててもう一つ持ってきてくれたので、それを持ってほの花の病室に向かった。
(来客って…カナヲ?なわけないか。カナヲなら来客なんていわねぇし。甘露寺でも来てんのか?)
しかし、大凡の予想は派手に外れて、持っていた茶を落としそうになった。
「あれ?宇髄さん、早かったですね〜。食べます?」
そこにいたのは幸せそうに大福を頬張るほの花と俺の顔を見た瞬間青い顔をしたあの時の女だった。
(…おいおい、どういうこった。こりゃあ。)
俺の心配をよそにほの花は気にもせずにおはぎを手に取り、パクリと食べる。
どうやらその女が持ってきたのだろうが、あんなことされておいて毒でも盛られてるとは思わなかったのかよ。
簡単に人を信用するほの花に心配しかないが、仕方なく近づくとベッドに備え付けの台に渡された盆を置いた。
「あやめちゃん、食べないの?一緒に食べようよ。はい。」
「え、いや、わ、私は…音柱様から…。」
「宇髄さんは甘いものは一個あればいいから先に選びなよ〜。」
じっくりと観察しているとどうやらこの女はほの花の天真爛漫さにまんまと引き入れられた様子でとても困惑していた。
俺がいることで緊張もしてるんだろうが…。
「何だよ、これお前もらったのか?」
「はい!頂きました。お見舞いで買ってきてくれたんです。あー!そういえば宇髄さん!私が甘味なら永遠に食べるとか言いましたよね?!私のことなんだと思ってるんです?!」
急にぷりぷりと怒り出したほの花に記憶を手繰り寄せると確かに言ったような気がして、若干目を逸らす。
永遠に食べるかどうかは知らないが、そのくらいたくさん食べると言うものの例えだ。
しかし、可愛い顔して眉間に皺を寄せながらおはぎを食べるほの花に謝らなければいけないのに笑いが込み上げてきた。
「悪ぃ、悪ぃ。でも、すげぇ食うじゃん。」
「そこまで言うなら食べたい時にいつでも買ってきてくださいよ。」
「はいはい。ごめんな。」
むくれてるほの花の頬を突っつくと少しだけ表情が柔らかくなったのでホッとした。