第17章 君色日和※
謝るためにわざわば甘味を持ってきてくれたらしい彼女は川島あやめちゃん。
会ったのは今日で三回目だが、なかなか濃厚な心模様を味わうことになった張本人だが、宇髄さんと仲直りしてしまった以上、正直なところもう何とも思っていない。
何なら彼女が誠意を尽くして謝罪までしてくれたことで、逆に晴れやかな気分でお礼を言いたいくらいだ。
「ちょっと待ってね!」と彼女に伝えると「アオイちゃーん!!!」と遠くの方に見えた彼女を呼び寄せてお茶を頼む。
「これありがとう!すっごく美味しそう!入院してたんだけど、食事制限もないし、もう治ったから今日退院なの。だから一緒に食べよ!」
「……は?え、わ、私は良いわ!あなた一人でどうぞ。」
「え?でも、もうあやめちゃんのお茶も頼んじゃったし。」
困惑している彼女のことを気にもせずに先ほどもらったばかりの甘味の箱を凝視する。
豆大福に草餅におはぎ、みたらし団子は全部で三つずつも入っていて、とても一人分には見えない。(いや、一人でも食べられるけど。)
んー…どうしようかな。
やっぱり豆大福…?
いや、でもなぁ…、みたらし団子も捨てがたい…。
折角、頂いたのだから心赴くままに食べてしまおうと思い、豆大福を手に取った。
「じゃあ、豆大福から頂きます!わーい、嬉しい!自分の薬が不味すぎて、甘味食べたかったの!ありがとうー!!」
パクッと大福にかぶりつけば、お餅が伸びて中の餡子の優しい甘さが体に広がった。
「いやーん、美味しいーー!ありがとうー!ありがとう!あやめちゃんは命の恩人だよ…。」
「…く、薬ってあなたが作ったのよね?」
「そうそう。作っておきながら何だけど、苦いの嫌いなの。今度から甘い薬を開発するね。いや、本当に美味しいわ、豆大福。」
あやめちゃんが持ってきてくれた甘味は町でも有名な和菓子屋さん。
此処の豆大福が一番好きな私は本当に幸せな気分になって、最早お詫びの品とかそういうことはどうでも良いと思っていた。
だから、二個目のおはぎに手を伸ばした時に入ってきた宇髄さんの驚いた顔の意味がよく分からなくてキョトンとしてしまった。