第17章 君色日和※
『アイツ、甘味が好きでさ。多分与え続けたら永遠に食うぜ。華奢で腰なんてこんくらいの細腰なのによ。どこに入っていくんだか。』
ほの花さんのことならば饒舌に話してくれた音柱様がそう言っていたのでお詫びの印に甘味を買ってこようと思ったのは朝の検診の時。
蟲柱様から前回怪我をした時の定期検診に来るように言われていたので、蝶屋敷に来たらたまたま此処で働いている女の子が話しているのを聞いてしまった。
「ほの花さん、熱も下がってもう大丈夫そうよ。あとは音柱様が午後に迎えにいらっしゃるのを待つだけね。」
「良かったですね!音柱様も一安心ですね!」
(ほの花さんって…神楽ほの花さんよね?…)
入院してたのだろうか?あの後のことは知らない。
音柱様が彼女を抱き上げて帰ってしまったので、そんなことは知りもしなかったが、よく考えたらあんな氷水に浸かっていたのだ。
風邪をひいてもおかしくはない。
見たところ彼女は音柱様と違って華奢だし、話した感じも普通の女の子といった感じだったから。
今日の午後に音柱様が迎えに来るならば、謝る機会は今しかない気がした。
このまま二度と会わなければそれで良いのかもしれないが、蟠りを残したままにしておくと自分が嫌だった。
許してくれなくとも謝るだけ謝っておきたかった。
何の甘味が好きなのかまで聞いていなかったが、お店にある甘味をなるべくたくさん購入してから蝶屋敷に舞い戻った。
「神楽さんのお見舞いに来た」と言えば鬼殺隊で尚且つ女だったので、すぐに入れてもらえた。こちらを見た時に「女性なら…」と言っていたので、恐らく音柱様から男性は入れるなと厳命されているのだろう。
彼女を守るために音柱様はあらゆるところまで手を尽くしている。
此処に入院させたのもそう言う経緯があるのかもしれない。
此処まで愛されて、大事にされている彼女がとても羨ましいが、もう負の感情はない。
愛されるだけの何かを彼女が持っているのだと何となく感じていたから。