第17章 君色日和※
それから暫く蟲柱様の診察をちょくちょく受けるために蝶屋敷に通っていると、神楽さんの話がよく耳に入ってきた。
音柱様の継子だけでなく、薬師としてお館様にも仕えていて、更に蝶屋敷で治療を受けている人の薬は殆ど彼女が作ったものだと言う。
まだ見ぬ神楽ほの花という人は継子だけで飽き足らず、音柱様の恋人という立場もあり、更に薬師としてもこんなに頼りにされている。
一つくらい私がもらってもバチは当たらないのではないか?そう感じるほど何もかも持っていると感じてしまった彼女。
強い嫉妬心と羨望は抑えることができない。
家に帰れば未だに返せていない包みが置いてあり、余計に消化できない想いが頭をぐるぐると回っていた。
しかし、聞けば聞くほど神楽さんの薬師としての凄さは話にあがれど、継子として戦果を上げたという話はあまり聞かなかった。
音柱様の継子だと言うならば、もっと任務で戦果を上げるべきだろうと言う自分の物差しで穿った見方をしてしまう。
どんな人なのだろう?という興味本位もあり、家に置きっぱなしだった包みを持つと音柱様の家に行ってみることにした。
彼女に贈ると言っていたこの膝掛けも薬の調合してるときに寒そうだからって教えてくれていた。それならば薬師の仕事だけしていればいいのではないか?
継子である意味はどこにあるのだろうか。
そんな黒い感情を腹に持ったまま、初めて彼女に会った時、私のそれは一気に沸点に達してしまい、彼女に嘘をついてしまった。
だってあまりに綺麗な女性だったから。
人形のように大きな瞳と小さな顔。
陶器のように白くて滑らかな肌。
艶々の栗色の長い髪。
細くて長い手足。
良いじゃない。
一つくらいくれたって。
あなたは他にもたくさん持ってるじゃない。
音柱様の恋人で
鬼殺隊の薬師としても認められていて
美しい容姿の神楽さん。
継子くらい私に譲ってよ。
わたしはそんな独りよがりな自分の欲を彼女にぶつけると傷付けた。
その時の泣きそうな顔は今でも覚えている。