第17章 君色日和※
夜にまだ微熱があった私はもう一度だけ不味過ぎる薬を飲むと翌朝には下がっていたのでホッとした。
昼には宇髄さんが迎えに来てくれると思うと心が浮き足立つ。
藤の家で貸してもらった着物を洗濯してくれたので身につけるとベッドに腰掛ける。熱が下がったばかりでまだ寝ていた方がいいのかもしれないが、背中の内出血していたところが少し痛むし、何より寝過ぎて体が痛い。
無理しなければ起きていても良いだろうと窓の外を眺めていると、「失礼してもいいですか?」と言う声が聞こえてきた。
アオイちゃん…?
カナヲちゃん…?
しのぶさん…?
いや、誰の声でもなかった気がする…。
しかもあの三人なら遠慮なく入ってくるよなぁ…なんて考えながら「どうぞ」と言うと入ってきた人物に目を見開いた。まさか彼女と此処で会うなんて思いもしなかったから。
「あ、あやめちゃん…!!」
「馴れ馴れしく呼ばないでって言ったでしょ…ってあなたに言っても無駄ね。…ったく。」
そこにいたのは一昨日、一緒に任務についていた川島あやめちゃんだった。
任務後の処理もせずに宇髄さんに連れられて行ってしまったのでまた特別扱いされていると感じて苦言でも呈しにきたのだろうか、と身構える。
そんな私に気付いたのかひとつ息を吐くと「はい。」と包みを渡された。
「え?…え、と、これは…?」
突然のことで状況を理解できずに差し出されたものと彼女を交互に見ることしかできないが、その反応にムッとしたようで眉間に皺を寄せるあやめちゃん。
「早く受け取りなさいよね。」
「あ、は、はい。ごめんね。」
それを受け取ると、すぐに出て行くかと思いきや、ベッド脇にある椅子に腰掛けた彼女。
どうやら中身を見てもいいようで、ジッと見ているので包みを開けてみた。
その中には大好きな甘味の数々。
大きな豆大福
小豆がたっぷり使われたおはぎ
甘い蜜に覆われたみたらし団子に色鮮やかな草餅。
昨日から苦い薬を飲んでいた私からするとその甘味の数々は至福でしかない。
でも、何故これを彼女が…?という疑問もあり、甘味とは彼女を再び交互に見つめた。