第17章 君色日和※
──ガラッ
「あ!ほの花ちゃん、起きたの?おはよう!って夕方だから"こんばんは"…?」
宇髄さんが出て行き、半刻ほど経つとアオイちゃんがお膳を持って来てくれた。
キョロキョロと病室を見回す彼女は宇髄さんがいるか気にしているのだろう。
前回、口づけやら抱擁やら見せてしまって恥ずかしいことこの上ない私はわざと明るく振る舞うことで無かったことにしたい。
「アオイちゃん!ごめんね、またお世話になります。」
「音柱様はお帰りになったんだね。ごはん、食べられる?」
「うん。任務だって言ってたよ。頑張って食べないと怒られちゃうから食べるよ〜。ありがとう。」
ヨイショ、と体を起こすが、朝の時ほどの体のだるさは感じないし、前ほどの強い目眩は感じないのでただの風邪なのは間違いないようだ。
「音柱様、ほの花ちゃんの声が聴きたいからギリギリまでいるって仰られてたから会えて良かった。」
「そうだったの?知らなかった。」
「うん。ずーっとほの花ちゃんの顔見てた。愛されてるねっ!」
寝顔を見られるのは恋仲であっても恥ずかしい。無意識下で変な顔してるかもしれないし、いびきとかかいてない?涎垂らしてない?とか気になることは山ほどあるのにいつでも寝顔を見たがる宇髄さん。
(まぁ、私も彼のは見たいけど。)
しかし、どうせなら起きて身だしなみを整えたところを見てほしいという乙女心は彼には分からないだろう。
「あ、あはは…、そ、そう…かな。ありがたいけど、寝顔見られるのは恥ずかしいんだよ…。」
「あー、分かる!でも、音柱様はすごい幸せそうに見てたよ?私が入って来てもこちらをチラッと見たきりでずっとほの花ちゃんのこと見てたもん。本当にほの花ちゃん以外興味ないんだなって。」
アオイちゃんの言葉に私は体が熱くなった。
宇髄さんに言われる愛の言葉も大好きだけど、こうやって第三者から教えてもらえることで愛を感じられるなんてこれ以上の幸せはない。