第3章 立ち振る舞いにご注意を
「あのな、これは日輪刀だと思うぜ。」
「え…?」
何ですと?!"ほらよ"と舞扇を返してくれる宇髄さんはわかりやすいようにポンポンと指を差した。
そこは金色に色付いていて、私の記憶が正しければそこはそんな色ではなかったはずだ。
「日輪刀は持ち主が初めて抜刀した時、色が付くんだ。ここはこんな色だったか?」
「い、いえ…違ったはずです。」
「だったらお前がこれを武器として構えた時に色付いたんだろうな。」
その舞扇はお父様が身を守るために武器を持っていた方がいいと言って作ってくれたもの。日輪刀とは特殊な鉱石が使われていると聞く。父は鬼の襲来を予見してこれを持たせてくれていたのだろうか。
そう言えば兄達も金色に色付いていたような気がする。
「しっかし、参ったなぁ。金色っつーことは何の呼吸なんだ?」
「呼吸…?」
「そう。呼吸を使えるようになると格段に強くなれるんだが、生憎金色なんて見たことねぇ。」
これは…もう彼には自分の家系のことを全て話す他なさそうだ。
そうでなければ私の疑問も解決しないような気がした。折角継子扱いしてくれるのだから師匠に甘えてみようか。
「あの、ちょっとお話がしたいのですが、今日の夜少しお時間をいただけませんか?」
「あ?今じゃ駄目なのか。」
「話が長くなりそうなので、お夕飯を食べてお風呂を頂いてからのがいいかと思います。」
だってほら…。
彼にも聴こえたようで納得したように頷くと立ち上がった。
「天元様ぁぁ!ほの花さーーん!!御飯ですよぉーーーー!!」
須磨さんの足音が大きくなったかと思うと部屋の襖を思いっきり開けたのだから。
「頼むから入る前に断りを入れてくれよ。」
「あれ、天元様もこちらにいたんですね?御飯ですーー!」
「聞こえてるわ!!デッカい声で叫びやがって。行くぞ、ほの花。歩けるか?」
少し時間を置いたことで幾分かマシになったのでおばあちゃんのようにゆっくりと立ち上がり、歩き出すと須磨さんが支えてくれた。
里の人以外に家系のことを話したことがなかった私は武者震いのような震えが体を襲っていた。
でも、大丈夫。
彼はきっと受け入れてくれる。そんな懐の深い人だとこの数日間だけで十分分かったから。