第3章 立ち振る舞いにご注意を
「別に悩み事…とまではいかないんですが、こんな実力でどうやって父を討ったのか不思議に思ったんです。日輪刀…って言うのも持ってないし…。」
心の内を言葉にしてみると宇髄さんが顎に手を置いて考え出した。
「いや、ほの花は弱くねぇよ?太刀筋もいいし、ちゃんと基礎を学んだことは分かる。だけど、実戦で戦ったことがねぇんだろ?今、俺がお前にやってんのはその時に必要な体力と諦めない精神力を養ってんだ。そうじゃねぇと、実戦で身が竦んで本気を出せねぇからな。」
「え、…?そう、ですか?」
「ああ。その時の武器は?なんか持ってたんだろ?」
「は、はい!持って来ます!」
最近、寝てばかりいてその武器を携えていなかったため、部屋に置いたままだ。
取りに行くため立ち上がるが、急に鍛え込まれたため自分の足がぷるぷると言うことを聞かずにその場でずっこけてしまった。
「おいおい、大丈夫かよ。」
「あ、足に力が入りません…。」
あまりに情けない自分の姿に恥ずかしさから宇髄さんの顔を見ることもできない。
"仕方ねぇなぁ"と立ち上がると、まるで米俵でも担がれるように彼の肩の上に乗せられるとそのまま部屋に連れて行かれた。
ついこの前までは優しく抱き上げてくれたと言うのにこれはやはり継子扱いし始めているのだろう。もう"客人"ではないのだ。
見慣れた畳が目に入るとそこに優しく下ろされる。
「どこにあんだよ。それは。」
「あそこです!あの棚の上に!」
「あー、あれな。」
宇髄さんは棚の上にある布包をそのまま持って来てくれるとそれを渡してくれた。久しぶりに手の中に帰ってきたそれを出してみると彼にそのまま見せた。
「これです。舞扇なんです。」
「へぇ…刀じゃねぇのか。」
それを手に取り広げてみると何かに気づいた彼が舞扇をジッと見つめだした。
舞扇が珍しいのだろうか。確かに戦うなら刀がいいと思ったが、歌ったり踊ったりするならこの方が持っていて不自然じゃないし、舞にも使えると思ってお父様にお願いしたものだったのだ。