第17章 君色日和※
解熱剤が効いてきたのか途中でスヤスヤと寝てしまったほの花。
額に触れるとまだ下がりきってはいないが、下がってきているようでホッとした。
前回の入院の時、解熱剤がなかなか効かなくて高熱に数日魘されていたので今回もそうなるのでは…と危惧していた。
しかし、蓋を開けてみれば熱は下がりつつあるが胡蝶に帰って良いと言われて肩透かしを喰らう。
この前は熱が下がるまで入院させられたと言うのに帰って良いとかあるのかよ。
医療のことはちんぷんかんぷんだし、コイツが良いっつーなら良いんだろうけど、何だか納得がいかない。
熱があるまま帰って、夜中に急変でもしたら対応してやれねぇという怖さもあるし、できたら
此処で治るまで預かってほしい。
会えないのは勿論寂しい気持ちはあるが、それよりもほの花の体のが大事だ。
こんな状態で帰っても俺は額に当てる手拭いを変えてやったり、食事の配膳やら汗を拭いてやることくらいしかできやしない。
任務だってすぐに入るかもしれない。
それならば此処で看病を受けてくれていた方が遥かに安心だ。
「…やっぱりよ、入院させるわ。」
「え?帰らないんです?」
「夜中に急変したらどうすんだよ。俺がいたら此処に連れてこれるけど任務が急に入ることもあるし、治るまで此処にいてもらった方が安心だからよ。」
驚いた顔をした胡蝶だったが、理由を聞いて納得してくれた。前回の時に病室で此処ぞとばかりに口付けたり抱きしめたりしたことをひょっとしたら根に持っているのかもしれないが。
「では、入院着を準備しますので着替えさせてあげてください。汗だくなのでそのままにしておくと悪化してしまいますから。」
「分かった。宜しく頼むわ。」
「構わないですが…入院中に病室で盛るのだけはやめて下さいね。」
「はぁ?おい、犬じゃねぇんだから」
「(同じようなものだと思いますけどね。)ああ、失礼しました。」
失礼な女だ。
まぁ、前回あれ以上入院が長引いていたら完全に盛ってた気がするのは間違いないと思うが。
俺は指定された病室にほの花を運ぶと胡蝶に言われた通り入院着に着替えをさせた。