第17章 君色日和※
──胡蝶邸 蝶屋敷
「胡蝶ー、うちのほの花頼むわー。」
そう言って宇髄さんが連れてきたのはほの花さん。
腕の中で寝てしまったようでスゥスゥと寝息を立てている。
「え?どうしたんですか?」
「多分、風邪だと思うけどよ。昨日の任務の時に氷水に浸かっちまって、朝起きたら発熱してたから。」
額に触れてみると少し熱いが、そこまで高熱というわけではなさそうだ。
話を聞くと解熱剤を飲ませたと言っていたのでそのせいだろう。
──ということは前回のように能力を使いすぎて出た熱ではないと言うことは明らか。
ホッとして、彼女を診察台に横にしてもらうと診察を始める。
着ていた着物が熱によって湿ってしまっているが、胸の音も良さそうだったので入院まではせずとも大丈夫だろう。
「お薬はほの花さんがご自分でお持ちでしょうし、軽い風邪だと思うのでお帰り頂いていいですよ。」
「は?入院しなくて良いのかよ。まだ熱あるぜ?前回の時は入院してたじゃねぇか。」
そこまで聞かれてうっかりしていたことに気づく。
そうだった。前回は解熱剤が効かない発熱だった故に入院が長引いてしまったが、今回は解熱剤が効いてきているようなので問題ない。
そもそも一緒にいたいだろうなと思って帰宅しても良いと言ってあげたのに勘がいいのか、こういう時に核心につくようなことを言ってくる。
彼女のことを愛してるが故だとは思うが、本当に迂闊に不用意なことは絶対に言えない。
「前回は解熱剤がなかなか効かなかったので入院が長引きましたが、今回は効いてきているので大丈夫ですよ。どうせ一緒にお帰りになりたいかと思って気を利かせてあげたんですけど。
入院させたいのなら構いませんよ?」
「…いや、させたいわけじゃねぇけど。熱が完全に下がってねぇから良いのかと思っただけだ。」
医療にそこまで長けているわけではないから余計なことを言わない方がいいと思ったのかそれ以上は聞いてこなかった。
しかし、この人は不審に思ったらすぐに気づく性質の人間だ。
特にほの花さんに関しては。