第17章 君色日和※
敬語使うな…って、そんなの無理!って思ってたのに昨日、使ってたというまさかの事実を突きつけられて愕然とした。
宇髄さんは師匠。恋人である前に師匠。
そして年上。
敬語を使うだけの要素は揃っているのに駄目だと言う。
確かに正宗たちには敬語は使わないが、それは昔からそうだったからでもう癖みたいなものだ。
しかし、反論できる要素を思い出した私は意気揚々と彼を見上げた。
「で、でも…あの御三方も宇髄さんに敬語使っていますよね?」
「だから?」
「え、だ、だから…?」
雛鶴さん、まきをさん、須磨さんは彼に敬語で話している。元嫁という立場なのにも関わらず、だ。
これは断る立派な理由になると感じていたのに全く取り合ってくれないのは何故だ?!
「アイツらは関係ないだろ。俺はお前に敬語をやめてほしいっつってんの。」
「…か、関係ないですか?だって元奥様…」
「だとしてもアイツらの時はそんな風に思わなかったんだから仕方ねぇだろ。俺はお前とはもっと対等でいたいんだよ。な?」
(な?って言われても…。)
不満気な顔を向けられるが、今更敬語を止めるというのはかなり難儀なこと。
それでも彼がそうしてほしいと言うならそうしたいが…。
鬼殺隊では恋人である前に、師匠と継子なのだからそれはまずいのでは…?
「…えと、二人でいる時だけなら…頑張ります…。」
「は?何でよ。」
「だ、だって…鬼殺隊では上司と部下なのですからそれは風紀が乱れます!だめです!」
「…ふ、風紀って…(真面目かよ)」
呆れたようにこちらを見てくるが、私はこれでも譲歩して提案した。
これ以上の譲歩はない。
鬼殺隊を引退したと言うならば話は別だが、今は風紀上問題ありだ。
「チッ、わぁーったよ。それじゃあ、二人の時は無しな?」
「が、頑張ります…。」
「胡蝶ンとこ着いたらお仕置きの口づけをぶちかましてやるからな。」
「宇髄さん、わたし、頑張るね!!」
トホホ…と肩を落とすが、対等でいたいと言ってくれたことは嬉しかった。
彼が喜ぶならば、望むようにしてあげたいと思うが、お仕置きが待ち受けているのは勘弁して欲しい。
しかし、運んでもらっているのにこれ以上の苦言は呈することはできずに納得せざるを得なかった。