第17章 君色日和※
前に熱を出した時よりも酷くはなさそうだが、それでも赤い顔をしてボーッとしているほの花に羽織を着せて毛布でぐるぐる巻きにする。
「お手数かけます…。」
「気にすんな。抱えるぞ?」
ほの花が頷いたのを確認すると抱き上げて立ち上がった。
昨日はあんなに距離感が近く感じたのに朝起きたら高熱があるのに、いつの間にか敬語に戻っていて舌打ちをしてしまう。
そろそろ敬語やめてくれないだろうか。
恋仲だというのにほの花はちっとも敬語の壁を取り払おうとしない。慣れてしまったというのもあるだろうが、気になって仕方ない。
外に出ると昨日の夜に積もったのだろう。
しんしんと雪が積もっているが、太陽が出ているのでその内溶けるはずだ。
「寒くないか」と問えば、「大丈夫です」と言うのでそのまま走り出す。
顔はまだ赤いままで解熱剤は効いてきていないのだろうが、意識はハッキリしているのでおねだりをしてみることにした。
「なぁ、ほの花。」
「はい?どうしましたか?」
「そろそろさ、それやめねぇ?」
「え?どれですか?」
キョロキョロと自分の身なりを確認し出すほの花は敬語のことなど気にもしていない様子。
だが、自分は気になる。死ぬほど気になる。
「…それ、敬語。俺は恋人だろ?もう良いんじゃね?無くて。」
「えええっ?!もう慣れちゃって無理ですよー!」
「無理っつーのが俺は無理。直せ。」
明らかに動揺しているほの花だが、不満はまだある。"宇髄さん"といつまで呼び続けるつもりなのだ。自分だって嫁に来たら宇髄になるわけだ。だから今のうちに直してほしいと思うが、欲張るとどっちもやってくれなくなるといけないので今は我慢しよう。
「えぇ…、け、敬語…を、ですか?」
「昨日の情交ン時は使ってなかったじゃねぇか。」
そう、昨日はごく自然に敬語を使っていなかったのでかなり嬉しかったが、覚えていないようでほの花は目を丸くして驚いている。
強い熱情に頭がいっぱいになれば、確かに覚えていられることは少なくなるだろう。
特にほの花はかなり気をやっていたしな。
だが、今日の俺はしつこいぞ。
良いっていうまで許すつもりはない。