第17章 君色日和※
「……熱出たな、ほの花。」
「出てません…。」
「顔真っ赤だぞ。」
「……うう…、身体がだるいです…。」
最悪だ、完全に風邪をひいたらしい。
藤の家の方が準備してくれた着物を身につけるのもツラいが、着るしかないのでよろけながら立ち上がると見兼ねた宇髄さんが支えてくれる。
「それじゃ寒ぃな。何か羽織り借りてくるわ。抱えてやるけど毛布みたいなのもあった方がいいな。」
「…ごめんなさい…。」
「仕方ねぇって。俺も昨日無茶させたよな。ごめんな。」
「や、そ、それは…私もシて欲しかったから…いいんです…!」
「……シて欲しかったなんて言うなって…。俺を煽る悪い口はどこだ?」
口を摘まれて戯れ合うのは彼との日常に戻ったみたいで素直に嬉しかったが、私の顔に触れた宇髄さんの顔は険しい。
「…結構高ぇな。このまま胡蝶ンとこ行くか。解熱剤飲んどけよ。」
私の隊服から薬箱を出すとそれを渡された。
また自分の薬を自分で飲むことになるとは思わなかった。
「…苦いんですよね…。解熱剤…。」
「作ったのお前だろうが…。」
信じられないと言った顔でこちらを見てくる宇髄さんに肩を竦ませた。
いや、苦くない薬なんて作ってない。
私の薬は全部苦い。
よく効くと言われて嬉しい反面、よくこんなのみんな飲んでくれるな…と本当はいつも薬師らしからぬ考えで頭がいっぱいだ。
「飲みます…でも、飲んだ後に羊羹食べたいです…。」
「普通逆じゃねぇの…?お前いつも何か腹に入れてから飲めっていうじゃねぇか。」
「うっ……。そ、それはいま忘れてください。」
何という自己中心的な薬師だ。
呆れる宇髄さんを横目におにぎりを差し出してきた。
「忘れられるか。ほら、これ食ってから飲め。一口でも良いからよ。」
「宇髄さん…、私は今度から子どもでも飲みやすい薬を作ろうと思います。」
「そりゃいいな。頑張れよ。ほら、食え。食って飲め。」
何を言っても頑として飲むまで許してくれなさそうな彼に仕方なくおにぎりを一口頬張る。
優しい塩気でとても美味しいのにこれから飲まないといけない薬のことを考えると美味しさ半減だ。
"薬飲むまで見張ってるからな"と目で訴えかけてくる彼に仕方なく私は苦い薬を我慢して飲むと涙目で項垂れた。