第17章 君色日和※
宇髄さんは私以外を継子にするつもりはないと言ってくれていたけど、本当にそれでいいのかな。
ヤル気のある隊士が鍛錬してほしいと思っているなら鬼殺隊の未来のためにも稽古をつけてあげるのは良いことだと思うんだけど…。
「…あの、私に気を遣わないでいいからね。それでもう拗ねたりしないから。」
「ンな変な気ィ遣うかよ。そもそも俺がほの花に遠慮する理由がねぇ。柱の任務もあるし、もう一人受け入れたら単純に時間が足りねぇ。」
「だ、だから…。」
「かと言って、お前以外に時間を割くつもりもない。言っておくけどな、お前は結構強ぇんだ。村田って奴が前の鬼狩りの時にほの花のお陰で倒せたって言ってたぜ。もっと自信持て。音柱様の継子なんだぞ。そんな自信なさげでどうすんだ。もっと派手に自慢しやがれ。」
自慢しやがれ…と言われてもそれは宇髄さんほどの実力がなければ無理だ。
でも、村田さんが彼にそんなことを言ってくれてたなんて知らなかったので正直に嬉しかった。
顔が見えなくてよかったのかもしれない。
彼の胸は温かくて弛緩した体を預けるのにちょうど良いし、肩口は広くて顔も収まるのでニヤける顔を隠すのにもピッタリだ。
格好つけて鬼殺隊の為とか考えてみたけど、本音は違う。いい子のフリしたって奥底に眠った本音が消えることはない。
「…やっぱり、やだ。わたしいがい見ないで。」
「…見てねぇだろ。」
「さわらないで…。」
「…悪かった。」
「こいびともつぐこも、わたしだけにして…。」
「お前以外作る気もねぇって。」
そこまで言えると途端に安心して急に眠気が襲ってきた。
宇髄さんはいつだって私の本音を引き出してくれる。"言ってもいいんだ"って思わせてくれる。
そんな懐の広い人だからこそ柱として尊敬されて、信頼されているんだ。
今日来てくれた時、柱として宇髄さんを初めて見たけど、本当にかっこよかった。
みんなが尊敬の眼差しを向けていて、そんな人が恋人なんて考えただけで誇らしかった。
派手に自慢しやがれって言うなら…
私の恋人はめちゃくちゃかっこいいんだって派手に自慢できると思う。