第17章 君色日和※
「はぁ…はぁ…。」
そこには首を斬られたことで崩壊が始まった鬼の姿。
その瞬間、ほっと一息つくと急に川の水が冷たく感じてぶるぶるっと震えた。
「…さ、さむっ!!」
「神楽さん、大丈夫?早く上がって?!」
村田さんが川辺からそう呼んでくれるが、手も足も悴んでいてなかなか前に進めない。
しかも、持っていた舞扇が悴んでいたことで、手から離れて川の流れに乗って流されて行ってしまった。
「え、やだぁ、待ってーー!」
折角、鬼を倒したというのに何という情けない終わり方だ。
流れていく私の武器を村田さん達も川辺を走って追いかけてくれるが、次の瞬間、目にも止まらない速度でそれが消えたかと思うと、私の体もふわりと浮いた。
その匂いが誰なのかなんて分かるに決まってるが、会うには時期尚早というかまだ心の準備ができてない。
それでも何故ここにいるのかという疑問よりその温もりにどれほどホッとしたか。
「…このクソ寒ぃのに水遊びなんかしてんじゃねぇよ。ほの花。」
その手には私の舞扇が握られている。
声色は怒ってはいなさそうだが、呆れているように感じる。
「…ず、ずみまぜん…。」
折角会えたが、気温と水音によって冷えた体は震えが止まらないし、呂律も回らない。
「…ったく、仕方ねぇ奴だな。お前らも怪我は?」
「音柱様っ、ありがとうございます。自分達は擦り傷程度です!」
「おー、村田じゃねぇか。じゃあ後始末とか諸々よろしく頼むわ。俺はコイツ連れて帰るから。お疲れさん。」
宇髄さんと村田さんが知り合いだったことは驚いたが、あやめちゃんがこちらを見ていたことに少しだけ胸が痛んだ。
自分一人で戦果を上げたわけではないのだから継子に拘ることないのかもしれない。
認めてもらえなくて悔しかったけど、やはり私はまだまだ鬼殺隊としてはひよっこだ。
「大丈夫か。」
「は、はい…。」
体は大丈夫だと思うのだが、兎に角震えが止まらない。
宇髄さんの声かけに何とか答えるが赤べこのような状態だ。
それでも宇髄さんの腕が暖かくて、突き刺すような寒さが幾分やわらぐようなきもしていた。