第17章 君色日和※
考える間もない。
慌てて後ろから斬りつけるが、あまりの硬さにこちらの腕が痛いくらい。
「三体はどうしたんですか?!」
「突然三体がくっついて吸収しあったんだ!!」
吸収?
…違う。恐らくコイツらは元々一つの鬼。
血気術で分裂していたんだ。
要するに私が斬ったのはコイツらの四分の1の強さの鬼。
四体が全部吸収されなくて良かった。
一体だけでも斬っておいたことで少し戦力は減ったことだろう。
「…十二鬼月ではなさそうだけど…、今度は硬すぎ…。」
よく見ると舞扇は刃毀れしてる気がして、気が気じゃない。
こんなの途中で折れたら最悪じゃないか。
しかし、迷ってる時間はない。
協力しあって首を斬るしかない。
「あやめちゃん、私が引き付けるから首を斬って!」
「だから馴れ馴れしく呼ぶなって言ってんの!」
苦言を呈されてしまったが、呼吸を使える剣士の方がひょっとしたら楽に首を斬れるかもしれないと踏んだ私は、囮になることを買って出た。
巨大な鬼は、流石に宇髄さんよりも遥かに大きくて冷や汗が出る。
だけどこのくらいで根を上げていたら陰陽師一族の名が廃るってもんだ。
式神 白虎を出したまま、私たちは二人で囮として引き付けるが、デカい割にはなかなかの速度を誇るその鬼に狙いが定められない様子。
どこかに固定するか、動きを完全に止めなければ…。
すると川があったことを思い出す。
一旦、あそこに入れてしまうか。
「あやめちゃん!村田さん達、ついてきて!」
幸いなことに知能が高い鬼ではなさそうで、従順に私と白虎の後を追いかけ回してくれる。
せせらぎが聴こえる方に走っていくと氷が少し張っている川を見つけた。
私はそこに迷いなく、飛び込むと白虎と共に四肢を固定した。飛び込んだことで粉砕された氷が川の流れも少し堰き止めてくれている。
「あやめちゃん達!早くっ!!」
体に突き刺すような寒さと水の冷たさで、手が悴んでしまえば固定は取れてしまうだろう。
「命令しないで!!今やるところよ!!」
すると水の呼吸の使い手の三人が同時に首を斬りにかかったので、咄嗟にもう一体式神を出し、潜って下から鬼門封じを使い、舞扇で首を狙った。
四人の武器が貫通する感覚がすると、私は川から顔を出した。