第17章 君色日和※
「えっ?神楽さん走ってきたの?すごい体力だな〜。」
たまたま顔見知りが多かったようで、村田さんもいたので少し心強かった。
真っ直ぐと射抜くような視線は彼女のものだろうが、一貫して毅然とした態度を取る。
「音柱様は?」
「先週から長期任務に行かれています。」
「そうなんだね。じゃあ僕は君と話しても怒られないで済むね!ハハハッ」
村田さんは喋りやすくてお兄さんみたい。
初任務以来会ったことはなかったけど、見知った顔がいるのといないのとでは気持ちの余裕が違う。
もう一人の男性隊士に話しかけられた村田さんがその場から抜けると彼女が私に話しかけてきた。
「継子の件、考えてくれました?」
聞いてくると思った。機会を窺っていたのだろう。彼女と安易に仲違いするのは今から鬼狩りをする上で好ましくない。
「鬼狩りの後でその話はしましょう。今は鬼の掃討だけ考えませんか。余計な感情は戦いでは邪魔になりますので。」
「……はいはい。」
少し不満気だが、痛い目にあうのは流石の私も嫌だ。鬼がいると分かっているのにそんな悠長に継子の件など話していられない。
陽も沈みかけているので、私たちは鬼が出たとされている山にまで来ると神経を研ぎ澄ませて辺りの音を聴く。
近くに川があるようで川のせせらぎが聴こえる。
あとは山の上の方は雪でも積もっているのだろう。雪を踏み締める音が聴こえた気がした。
鬼かどうかは分からない。
舞扇を携えると、山に注視する。
静かな山の様子にヒューっという木枯が吹き荒れる。段々とこちらに降りてくる足音が聴こえる。
いち
に
さん
し
四体。間違いなければ四体いる。
こちらもちょうど四人だ。一人一体倒せばすぐに終わるだろう。
「……来ますね。」
「現継子様に言われなくても分かってます。」
「神楽ほの花です。あなたのお名前は?」
「…川島あやめ」
「じゃあ、あやめちゃん、また後でね!」
「は?馴れ馴れしく…ちょっと!」
自分が最初に飛びかかることで気を引き付けると、まずは一体の首を斬った…が、あまりに呆気ない。
しかし、それと同時に体の崩壊が始まらないことに気づき、すぐに距離を取る。
首が弱点じゃない…?!