第17章 君色日和※
朝の鍛錬をちゃんと行い、薬を出来るだけたくさん作っていると突然音花が入ってきて「任務ーーッ!」とけたたましい声で叫んできた。
「わぁっ!び、びっくりしたぁ…!」
「ほの花ーーッ!任務ーーッ!北北東ーーッ!昨夜鬼ノ出現ノ可能性アリーーッ!仲間ト落チ合イ、鬼ヲ掃討セヨーーッ!鬼ーーッ!急ゲーー!」
「わ、わかった、分かりました!!」
音花が急かすが、薬師として薬はちゃんと持っていかないといけない。
痛み止めや傷薬をたくさん鞄に詰め込むとそれを肩から掛けて外に出る…前に、鏡台の前に向かった。
久しぶりに開けるその引き出しには宇髄さんにもらった花飾りと耳飾りを入れている。
私はそれを久しぶりに付けると鏡の前で笑顔を作ってみる。
「…よし、行くか。宇髄さんに会って謝るまで絶対死ねない。頑張るぞ…!」
そう意気込み、北北東に向かう。
まだ陽は高いが、雪が降りそうなほど肌寒い。布面積の少ない隊服では体温を補うことはできないので、仕方なく準備運動も兼ねて走っていくことにした。
宇髄さんの地獄の鍛錬のおかげで持久力が付いているので、数時間でも走り続けることができるようになっていた。
稽古を受けてくれないとあれほど恨み節を言っていたが、ちゃんと身になっていることも多いし、彼は柱なんだから忙しいに決まっている。稽古をつけてもらえるだけありがたいのに、宇髄さんが優しいからと言って甘えすぎたのかもしれない。
30分ほど走っていくと背中に"滅"の文字が書いてある隊服を着ている人たちを見つけた。
そこに混じると「神楽ほの花です。よろしくお願いします!」と挨拶をした。
しかし、その中の一人の顔を見て私は心底驚いている。
「…あ、と…お久しぶりです。」
「どうも。」
それはあの日、宇髄さんの継子を譲ってくれと言ってきた女性隊士。
お互いに驚いた様子だったが、もう私は揺らがない。信じるのは彼女の言葉じゃない。
宇髄さんの愛だけ。