第17章 君色日和※
翌日、朝方に帰宅してもまだ宇髄さんは帰っていなくて少し仮眠を取ろうと思い、横になった。
布団を敷く気力まではなくて、その場に横になってみるが肌寒くてなかなか寝付けない。
ふと膝掛けの存在を思い出したが、"他の女性が触れたものなんて使いたくありません“と啖呵を切ったくせに虫が良すぎる話だ。
でも、少しだけどういうものなのかちゃんと見てなかったので、"広げてみようかな"なんて考えが頭をよぎる。
布団も敷く気力もないと思っていたのに棚に仕舞い込んだ風呂敷包を取り出して、恐る恐る開けてみると薄紅色の暖かそうな膝掛けが出てきた。
(…綺麗な色。私の好きな色だ…。)
彼女は自分に買ってくれたものだと言っていたけど、広げてみるとそれが嘘なのではないかという答えに簡単に行き着いてしまう。
だってそこには…
「…しろい、花…。」
宇髄さんが事あるごとにくれる装飾品の数々。
その中のいずれにもこの白い花がついていて、花飾りも耳飾りも…全部白い花がついていた。
色だって私が前に好きだと言った色を覚えていてくれたのだろう。
この膝掛けは私のために買ったと言ってくれていたのに…。
何ということを言ってしまったのだろうか。
「…っ、ふ…宇髄さん…っ、ごめ、なさ…。」
勝手に出てくる涙が熱い。
彼の愛が溢れてくる。
何で信じられなかったのか今はもう分からない。
"私のことなんて好きじゃないですよね?"
と言ったら彼は"馬鹿だな、お前"と笑っていた。
本当に私は大馬鹿者だ。
こんなに愛されていたのに何故それすら疑ったのか。
簡単に揺れてしまうほど弱い私はもういらない。
彼に謝って、ちゃんと許してもらいたい。
そして、出来ることならばちゃんとやり直したい。
私はその膝掛けを抱き締めるとそのまま眠りこけてしまっていた。
起きたら宇髄さんが帰っていてくれたらいいなぁ、なんて淡い期待を抱いたが、彼はまだ帰っていなかった。
でも、私はもう迷わない。
(…大嫌いなんかじゃありません。世界で一番大好きです。)