第17章 君色日和※
──産屋敷邸
今日は曇っているからか体が怠いという産屋敷様は布団に横になっていて、そのままの体勢で薬の調合をしているとドキッとするようなことを聞かれた。
「ほの花、天元と何かあったの?」
「え?」
何も言っていない。
宇髄さんとのことも何も言っていなければ、態度にも出していないと思うのにこの人は何故気付いたのだろう。
不思議に思い、なかなか答えられずにいると少し口元を緩ませて産屋敷様がゆっくりと話し出した。
「いつもしている耳飾りと花飾りの音が聴こえないからね。何でしてないのかな、と思ったんだけど…当たり、だったかな?」
それを言われて動揺した。
何もないとは言えない。でも、産屋敷様は宇髄さんの継子にしてくれた張本人。
自分が至らなくて継子として認めてもらえないなんて恥ずかしい事実はあまり言いたくない。
「天元はね、いつもほの花のことを想ってるよ。君の薬が如何に凄いかをいろんな隊士に言って回ってるって小耳に挟んでね。」
「…宇髄さんが…ですか…?」
そんな話は初めて聞いたので寝耳に水で物凄く驚いた。
「そう。君が薬師としてちゃんと認められるように彼は一番尽力してくれていたと思うよ。それは君のことを継子としても恋人としても、信頼しているからだと思うんだ。」
産屋敷様の言葉がスゥッと頭に入ってくると、彼の想いで胸がいっぱいになった。
「男は言葉足らずで女性のように細やかな気配りは出来ないけど、天元はほの花のことを誰よりも愛していているよ。だからもし、ちょっとしたすれ違いがあったのなら…許してあげてね。きっと彼は君のことを好きすぎるだけだから。」
天井を真っ直ぐ見ていた視線をこちらに向けるとニコリと微笑んでくれた産屋敷様に涙が込み上げたがグッと堪えた。
その代わり、私は彼の肩に手を乗せると怠さが取れるように…と念じる。
能力を使うのは久しぶりだったのと、少し痩せた体のせいでふらつくが深々とお礼をすると薬を置いて、胡蝶邸へと向かった。