第17章 君色日和※
宇髄さんと顔を合わせなくなってから一週間が経っていた。
そこまで来ると宇髄さんが長期任務に行っていることが分かり、避けられているわけではないことが少しだけホッとした。
"宇髄さんなんて大嫌い!"と心にもない言葉を浴びせてしまったせいで、愛想を尽かされた気もするし、帰ってきた宇髄さんとどんな顔をして会えばいいのかも分からなくなっていた。
こういう時、仲直りは早い方がいいというのは本当で、自分から喧嘩をふっかけておきながら仲直りしたいと思っていた私はなんとも滑稽だ。
しかし、それも時間が経てば経つほど仲直りすら烏滸がましいと思えてきて、彼とは終わったことにした方が宇髄さんも気が楽かもしれないと悪い方向のことばかりが思い浮かぶ。
「ほの花さーん!ほの花さーーん!」
突然、須磨さんが手をひらひらとさせて私の意識の確認をしてくれたので驚いたが、直ぐに笑顔を作る。
「どうしました?ごめんなさい。ぼーっとして。」
「大丈夫ですかー?ごはんもう食べないんですか?もうちょっと食べないと痩せちゃいますよ!」
「そうですよ、ほの花様。もう少し食べてください。」
いつの間にか大進までもが須磨さんの横に陣取り、人の食事状況を確認してくるので仕方なく無理やり詰め込むと「ご馳走様でした」と食器を片付ける。
食欲がないというより美味しく感じないというのが強い。
何食べても美味しくないから食べたくない。
でも、お腹はちゃんと空くし、食べてはいる。
毎日の仕事に追われていることだけが唯一の救いだ。今日は産屋敷様の薬の調合の日なので逃げるように自室に向かうと荷物を持って屋敷を飛び出した。
屋敷にいることがツラい。
彼の匂いが感じられるあそこに私の居場所はもう無いのかもしれないと考えるだけで胸が苦しくなる。
だから今日みたいに出かける予定があると少しだけホッとしてしまうのだ。