第17章 君色日和※
私は泣き続けること丸一日。翌日の昼まで泣いては寝て、泣いては寝て…をただただ繰り返していた。
朝に必ずやっていた鍛錬も初めてサボってしまって、自己嫌悪に駆られる。
(…これじゃ、継子を譲れって言われても…文句言えないや…。)
ぼーっとした頭のまま、鏡台の前まで行くと酷い顔をした自分と目が合う。
「……うわぁ…、ぶっさいく…。」
宇髄さんは任務にでも行ったのだろうか。彼の部屋からは物音はしない。
泣いたことで少しは頭がスッキリしたようだが、端に置かれた膝掛けを見るとまだモヤモヤとした気持ちに脳が洗脳されてしまう。
慌ててそれを棚の中に仕舞い込み、見えないようにすると隊服に身を包んだ。
朝の鍛錬はサボってしまったので今からやるとして…傷薬も作らなければならない。
やることはどんどんと思い浮かぶのに、その中に"彼との仲直り"の項目が出てこないのは、自分の中で彼とは元に戻れないと思えてならなかったから。
寝坊したことも、昨日荒れ狂ってしまったこもも謝らなければと、台所に行くとちょうど昼ごはんの支度をしている三人に会えた。
「ほの花さん!あの、大丈夫、ですか?」
「はい!ご迷惑をおかけしました。お手伝いしますね。」
「…あの、ほの花さん!天元様は任務にいかれて…」
「まきをさん、大丈夫ですから。」
何が大丈夫なのだろうか。宇髄さんのことを諦めるから?薬師として継子としてちゃんとやるから?
宇髄さんがいなくても大丈夫だということ?
自分自身もその言葉の意味は分からない。でも、今はまだ宇髄さんのことをちゃんと考える余裕がない。
雛鶴さんに制止されるように肩をトンと叩かれたまきをさんは言葉を飲み込むといつものように接してくれた。
見るだけでつらくなる花飾りと耳飾りは先ほど鏡台にしまってきた。
あれをつける資格は今の私にはない。
彼に愛されるに相応しい女になるまでアレはもう付けない。
そうしないと私は前に進めないから。
彼のせいにしてまた嫉妬に塗れた醜い女になってしまうから。