第17章 君色日和※
「…あー、やっちまった。」
後悔先に立たず、だ。
今更どうしようもないことが頭を悩ませるが、此処まで大喧嘩のようなことをしたこともなかったし、どうしたらいいのか分からずにいる。
すぐに謝ってしまえばよかったのだが、まだほの花が啜り泣く声が聞こえてくるのに頭を抱える。
こんな時に好きな女の泣き声が耳が良いせいで聴こえてきちまうなんて地獄の沙汰だ。
しかも泣かせてるのは自分。
ころのすけがペロペロと舐めてきたので、ヨシヨシと撫でてやる。コイツをそのまま連れてきてしまったが、ほの花の部屋に置いてきてやった方がよかったか。
慰められたいのは俺よりもほの花だ。
もう何もかもが悪循環で四面楚歌状態。最悪な状況だ。
これでほの花から「別れる」なんて切り出されてみろ。俺、マジで死ぬぞ。
「カァーーーッ!宇髄天元ーーッ!北北東ーーッ!任務ーーッ!!」
「だぁーーーっ、うっせぇな!!今それどころじゃねぇんだよ!」
「柱ァ!職務放棄ーーッ!!」
「ちげぇし!うっせぇな!行くわ!派手に行ってやるわ!鬼の首を切り刻んでやるわ!」
「遠出ェェ!!長期任務ーーーッ!」
ほらな、悪いことは続く。
悪循環はこんなところにも出ていて、ほの花との仲直りは当分できそうにないことを悟ると肩を落とす。
ころのすけを掴むとそのまま居間に向かう。
こんな時に限って遠出って何だよ。
足が速いこともあって遠くを任せられるのは慣れっこだが''今"じゃねぇ。
襖を開けるとさっき見たことを既に忘れているかのように団欒している六人に若干腹が立った。俺がこんなにも思い悩んでいるというのに。茶しばいてやがるとは良い度胸だ…と八つ当たりなような考えが頭に浮かぶが、それをぐっと飲み込む。
「…長期任務が出た。今から行ってくるからころのすけと…ほの花を頼んだ。」
「…宇髄様、行ってらっしゃいませ。こちらのことはお気になさらず。大丈夫ですよ。」
こういう時、ほの花の昔馴染みがいるというのは心強い。俺の味方にもほの花の味方にもなり得る存在は、ありがたいとしか言いようがなかった。