第17章 君色日和※
意図的に稽古を減らしていたのも、そんな時間という時間全てを駆使して仕事をしまくっているほの花の少しでも休息になればと思っていたのが裏目に出た。
確かに薬師としてやっていけば良いとも思っていた。
だから前ほど鍛錬はしなくてもいいかとすら思っていたが、真面目なほの花が俺の言った鍛錬をやめることはなかったし、それならば…と申し訳程度に稽古を付けてやった。
本気で薬師としての仕事だけをやってもらった方が自分としては安心だったからだ。
でも、涙ながらに言われた言葉に何も言い返せなかった。
''大した継子じゃないって言われた私の気持ちわかりますか?情けなくて悔しくて…宇髄さんには分かりっこないです!!"
一語一句間違えずに覚えてる。
それを言われた時、やっと自分の独りよがりな想いを押し付けてほの花を傷つけたことに気付いたのだ。
嫉妬を押し付けるのとはわけが違う。
俺は一生懸命にどちらも取り組んでいたほの花の想いを自分の欲のために踏み躙った。
そのせいで他の隊士に大した継子じゃないと思われたと。それは完璧に師匠である俺の過失。ほの花のせいなんかじゃない。
ほの花は嫉妬に狂って、ただ怒っていたわけじゃない。一生懸命やってるのに味方である筈の俺に裏切られたと思うような行動をされたからあそこまで怒っていたのだ。
そう思うのも致し方ないほどのことをしてしまった。
泣き叫ぶほの花の悲痛な想いを考えると胸が痛む。
(…何やってんだよ、俺は。)
確かに俺なんかに分かりっこないことだ。柱としてある程度認知されていれば一般隊士に馬鹿にされるようなことはない。
だが、ほの花は違う。
胡蝶のとこのカナヲのように鬼殺隊の任務だけをやっているような継子とも違う。
異質な存在故に、理解され難い立場だったのだから俺が一番理解して支えてやらないといけなかったのに。
あんな風に他の隊士に誤解されて傷つけさせる前に何故それを分かってやらなかったのか、今は後悔で頭がいっぱいだった。